乳がんの長期予後は良好となってきており、患者全体で5年生存率87%程度との推計がある。初期治療後に再発する10%前後の高リスク患者を特定するため、また一方で化学療法の必要性が少ない低リスク患者の生活・仕事に影響を及ぼす「不必要な治療」を回避するため、再発リスクの正確な分類が課題となっている。
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2021年次総会において、フランスのAIスタートアップOwkin社とがん研究機関Gustave Roussyが共同で「病理スライド画像と臨床データにディープラーニングを適用した乳がん診断ツール」を発表している。早期乳がんでエストロゲン受容体陽性(ER+)、HER2陰性(HER2-)の患者1,437名を対象とした研究プロジェクト「RACE AI」から、再発リスクを予測するAIモデルを構築し、5年遠隔再発の予測でAUC 81%を達成した。
Gustave RoussyのGarberis博士は「このモデルは早期乳がん患者の再発リスクを予測し、低コストで治療方針を決定する有望なツールになるだろう」と語る。共同研究に参加しているOwkin社は、CB Insightsが毎年公表する「世界の有望AIスタートアップ」(過去記事参照)の2021年版にも選出されており、ESMOには「肝臓がんの進行予測AIモデル」も発表するなど業界における存在感を強めている。
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