メンタルヘルスという定量化が難しい要素に対し、専門家による主観評価を介さず、大規模集団データからの機械学習によって客観的な代理指標を得ようとする試みがある。フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)のグループが研究成果をGigaScience誌に発表している。
GigaScience誌のインタビューに、同研究の著者Denis Engemann氏が答えている。研究チームは英国の長期大規模健康データバンク「UK Biobank」を用いてメンタルヘルスを指標化する機械学習モデルを構築した。UK Biobankにはアンケートデータや脳MRI画像など多面的なデータが含まれ、AIモデルはデータ間の統計学的関連を反映して指標の予測を行う。その結果のひとつとして、従来のアンケートによるメンタルヘルスの評価を経ずに、脳画像の特徴を代理指標としてメンタルヘルスを説明することができるものがある。
研究チームはもともと、生物学的老化のバイオマーカーとして「脳年齢」を導き出す研究を行ってきており、その枠組みを心理的評価の範囲に一般化することで今回のモデル構築に至った。Engemann氏は「この種のアプローチは心理学者に取って代わるのではなく、古典的なアンケートに加えて、より豊富なツールキットを持つことを意味する。将来的には、心理学者と機械学習モデルがコンビを組んで、よりきめ細やかでパーソナライズされた心理評価ができるようになるかもしれない」と語っている。
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