失明原因で最も一般的な眼疾患「緑内障」において、早期診断は障害の進行を防ぐために重要な役割を果たす。従来の手法として、検眼・眼圧検査・視野検査などを組み合わせて総合的に緑内障はチェックされる。一方、新技術として瞳孔径の光反応から緑内障をスクリーニングする手法が考案されているが、手作業による監視が必要であったり、高い計算コストなどの課題があった。
豪州ロイヤルメルボルン工科大学のリリースによると、同大の研究グループは、日常環境光のもとで市販の視線計測機器(アイトラッカー)を用い、瞳孔径データから緑内障を検出するAIアルゴリズムを開発している。研究成果は学術誌 IEEE Accessに発表された。本研究ではGazepoint社のアイトラッカーGp3を用い、椅子に座った被験者は画面中央のターゲットに120秒間焦点を合わせ、その間に瞳孔径のデータが収集される。機械学習手法による解析の結果、緑内障患者と対照群の間で有意な差を検出できた。
本研究において、瞳孔が解析に必要な定常状態に達するまでに要する時間は10秒間であり、このことから「10秒で可能な緑内障スクリーニング」を謳い文句としている。グループの代表であるDinesh Kumar教授は「本研究の成果は、一般の診療所で日常的に行える、非接触で使いやすい低コストの緑内障スクリーニング検査を実現するものだ。地域のスクリーニングプログラムを促進することで、手遅れになるまで治療を受けていなかった人々に検査を届けられるかもしれない」と述べている。
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