心血管疾患患者のリスクを層別化する試みとして、これまで様々なスコアリングシステム(Systematic Coronary Risk Evaluation [SCORE]、[QRISK3]、Framingham Risk Score [FRS]など)が確立されてきた。それら既存スコアを上回る正確さを持つ「心疾患患者における10年以内の死亡可能性を予測するAIスコア」が、欧州心臓病学会(ESC)の学術会議EuroEcho 2021で発表された。
ESCの11日付プレスリリースによると、米ジョンズホプキンス病院の研究グループから発表された新しい予測スコアは、従来手法と異なり、薬剤負荷心臓MRI(ストレスCMR)で測定した画像情報が含まれている。ストレスCMRは、患者に対して運動による心臓へのストレスを模した薬剤を投与しながら、心臓のMRIを撮像する検査手法となる。2008〜2018年の間に、心血管疾患疑いあるいは高リスクという理由でストレスCMR検査を受けた31,752名の患者を対象として、CMR検査結果から11のパラメーター、および23の一般的臨床パラメーターが収集され、中央値として6年間に渡る患者フォローアップが実施された。また、観察期間中には2,679名(8.4%)の患者が死亡している。収集データから機械学習アルゴリズムを構築し、患者が10年以内に死亡するリスクを0(低リスク)〜10(高リスク)で示した。結果として、スコアは76%の精度で患者死亡を予測することができており、これは従来の確立されたリスク層別化スコアよりも有意に高い予測性能を示していた(SCORE = 0.66、QRISK3 = 0.64、FRS = 0.63)。
本研究成果はEuroEcho 2021のセッション「Young Investigator Award – Clinical Science」で発表された。著者のTheo Pezel氏は「今回の結果から、胸痛・呼吸困難・心血管疾患危険因子を持つ患者は、ストレスCMR検査を受けてスコアを算出すべきと考えられた。リスク層別化との関係が不明な臨床情報でも、機械学習による多変数の同時解析によって、私たちが気付かなかった関連性を見つけることができる。リスク予測を改善することで、重点的なフォローアップや運動・食事などのアドバイスを、最も必要としている患者に届けられるだろう」と述べている。
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