英国では医療の質向上のため、現場で起こったあらゆるインシデントを政府に報告する義務がある(patient safety incident report)。ただし、この報告書は大部分が自由記述形式で提出されるため、その量の多さと相まって適切な解析が行われているとは必ずしも言い難かった。英カーディフ大学の研究チームは、これらレポートを自動解析するAIシステムを解析し、公表した。
Health Informatics Journalに7日公開された論文によると、研究チームは、プライマリケアの現場から報告された3万を超えるレポートから、今回のアルゴリズムを構築したという。AIによる自然言語処理で、インシデントのタイプや傷害の重篤度などを識別することができる。現時点で人手による分類能を超えていないが、スクリーニングツールとしての利用価値を強調している。
医療におけるインシデントの予防・再発防止策は、各医療機関のPDCAに委ねられていることが多い。一方、英国民保健サービス(NHS)が行うような、大規模なレポートの集積と解析結果の公表は、効率的なインシデント予防策の立案に結び付けられる可能性が高い。AIによる解析補助が、インシデント対策のさらなる向上をもたらすか、注目が集まっている。