スポーツでのドーピングとその隠ぺい技術は巧妙化し、アンチ・ドーピング活動はイタチごっこを強いられている。造血剤(EPO)や自己血輸血での心肺機能強化、ステロイドでの筋力増強、興奮作用薬などに関して、不正使用と検査逃れのテクニックは後を絶たない。コスト増大と人的資源の不足に対処するため、AIによるアンチ・ドーピング技術に期待が集まっている。
英メディアiNewsの報道によると、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は、アスリート達の生体検査履歴(通称: 生体パスポート)へのAI分析の実用化を目指している。分析担当者の負担を軽減し、ドーピング検出率と正確性の向上で、競技の健全化と運営コスト軽減を期待する。
生体検査でのドーピング検出とは異なるアプローチも始まっている。仏Allianz Partnersは、フランス国立科学研究センター(CNRS)が異常な競技パフォーマンスの向上を検出するAIアルゴリズムを開発したと報じている。AIのいわゆるブラックボックス問題(過去記事)などから、アルゴリズム単独でドーピングを完全に証明するのは容易ではない。生体検査対象とするアスリートの検出・絞り込みによりコストの集中と軽減をねらいとしているとのことだ。