医療詐欺・不正請求と戦うAI

医療費の請求よりも安価な検査が実際行われていた時、それは単なる間違いかそれとも詐欺なのか?FBIの試算では医療詐欺により年間数千億ドルが米国内で負担されているという。医療システム全体のコストを押し上げる不正は、健全な医療を妨げる。AIは医療詐欺や不正請求に対抗できるだろうか。

Forbesによると、医療詐欺の潜在的可能性へのフラグ立てにAIが効果的だという。典型的な医療詐欺の一例『アップコーディング』は、実際の医療行為よりも高価な種類のコードで医療費を請求するものである。疾患に則した検査と治療選択肢をAI自身が理解することで、逸脱した医療の動きに詐欺の可能性のフラグを立てる。『キックバック』は、仲介・紹介関連で不当な利益を得る不正である。医師からの患者紹介先の履歴にある不自然な偏りや、恩恵にあずかる団体から支給された旅費などに、不正の芽を検知できるようになるという。

異常検出のAI技術発展の一方で、意図的な不正と偶発的な事故との判別は今後の課題となる。臨床研究目的など非定型的な医療行為がAIアルゴリズムで検出された場合など、最終判断はヒトの手に委ねられる。日本においても、医療現場が更なる事務負担で疲弊しないよう、誤検出の少ない、信頼性の高いAIアルゴリズムが期待される。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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