AIはハゲタカジャーナルにどう対抗するか?

正しい査読を経ずに執筆者から論文掲載料を奪う、いわゆるハゲタカジャーナル(predatory journals) が増加している。執筆者が発表数をかさ増しする意図もあり、研究費から拠出される掲載料は執筆者の懐を傷めず、不誠実な共依存関係もその一部にはある。データが偽造・改ざんされた悪質な論文が混入するなど、科学界の信憑性・信頼性を損なっている。

Analytics India Magazineでは、AIによる論文評価をサポートする取り組みを紹介している。Machine Boxというツールは、Docker(PC上の仮想環境ソフトウェア)に機械学習機能を組み込み、自然言語処理で論文中の言い換え部位などを特定し盗作を検出する。また、米シラキュース大学のチームが実装したアルゴリズムは、膨大な論文内画像を掘り起こし、回転など加工された複製画像でも検出が可能という。

AIは査読プロセスの改善と自動化に重要な役割を果たすようになってきている。しかし、真の言語能力はヒトのプロフェッショナルを超えていない。MITが作成したソフトウェアSCIgenはデタラメの論文でも自動生成が可能として話題となったが、その混入を検出する労力は割に合わない面も確かにある。低質な論文を粗製乱造するハゲタカジャーナル問題は今後も続くだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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