赤外線を利用することで眼底三次元画像を得られる光干渉断層撮影(OCT)は、眼科診断領域での普及が進んでいる。網膜の断面を画像化することで、浮腫の程度や出血の範囲・深度などを正確に把握することができる。この度、OCT画像から網膜疾患を識別することで話題を集めたAIシステムが、その臨床試験を完了した。
オンライン光工学メディア・Optics.orgの報道によると、米Optovueと中国Ping An Technologyが共同開発したこのAIシステムに関する臨床試験は、昨年12月、上海に所在する3つの大学病院で開始されたものだという。試験結果では、OCT検査からシステムによるレポートが生成されるまでに3分しかかからないこと、病変部位の特定精度が98.6%、緊急性の評価精度が96.7%と、その迅速性と高い識別精度などが確認されたとのこと。
昨年、学術誌・British Journal of Ophthalmologyに掲載された論文では、眼科疾患の多くがAIによる正確な診断評価が潜在的に可能であることが指摘された。一方、アルゴリズムのトレーニングデータにおける多様性の不足、深層学習モデルのブラックボックス性などから、正規の手続きにより大規模な臨床試験に至る例はまだ限られていた。