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電子カルテの自然言語処理で患者の社会的孤立を検出する取り組み

社会的に孤立していることは、喫煙・肥満・高血圧などに並ぶ健康リスクとなる。しかし、実際の医療現場でアンケートなどを利用し、孤立を確認することは簡単ではない。日々の電子カルテの記述から、自然言語処理で潜在的な社会的孤立を検出できる可能性が示されている。

HealthITAnalyticsの報道によると、サウスカロライナ医科大学(MUSC)は同院の前立腺がん患者の電子カルテ記載を自然言語処理ツールで解析し、社会的孤立を90%の精度で検出できたという。学術誌BMC Medical Informatics and Decision Makingに収載された研究成果では、1057名の患者における5万点に及ぶカルテ記載から、17名の社会的孤立を検出した。著者らは社会的孤立患者の死亡リスクが上昇することも指摘している。

うつ病やアルコール・薬物乱用のような決定的な要素とは違い、社会的孤立には医療者が注意を払いにくい側面がある。電子カルテからアルゴリズムで自動検出することで、社会的孤立患者に支援の手が届く可能性がある。孤立のひとつの例として、日本では高齢世帯での引きこもり家族が社会問題ともなっている。AIツールによる孤立患者の検出は、健康管理の新しい切り口となるかもしれない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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