診療録の電子化は、究極的には施設横断的に個人の生涯に渡る健康記録を共有することができ、予防・診断・治療・予後追跡を含むあらゆる局面で強力な健康増進に繋げることができる。また、近年の加速度的なAI技術・データ処理および解析技術の向上によって、多くの新しい医学的知見が生まれ、個人の健康に還元できる時代となっており、電子診療録がこれに果たす役割はとても大きい。
Healthcare IT Newsの報道によると、マレーシアの厚生大臣は同国全ての公立病院に電子カルテシステムを導入する意図を明らかにしているという。現時点で145の公立病院のうち、電子診療録を導入済みの機関は35(25%)にとどまり、1703の公立クリニックでは118(7%)に過ぎない。未整備の全ての機関に導入する場合、必要な費用は15億マレーシア・リンギット(日本円でおよそ390億円)と見積もられる。
東南アジアから中近東にかけての国々では、古くからPersonal Health Recordと呼ばれる「健康記録の自己管理」が文化的に根付いている。一方で、近年のデータ関連技術向上を背景に、マレーシアのように電子診療録と健康データの集積管理の導入を目指す国々は急速に増えている。ただし先進国であっても、電子カルテシステムは各社全く異なった様式で入り乱れるケースが多いことなど、今後に向けての課題も少なくはない。