消化器内視鏡検査は、組織の性状を直接観察できるため非常に情報量の多い検査のひとつである。また、必要な場合には診断や治療を目的として、その場で組織を切り取ることさえできる。ただし、施行部位を問わずその痛みや不快感は多大で「低侵襲な検査」とは言いがたい。今回は、AIとロボティクスによる消化器内視鏡検査の未来を紹介する。
学術誌Science Roboticsに掲載された論文によると、英リーズ大学を中心とした研究チームは、磁気を利用した小型カプセルロボットを消化管モデル内で適切に誘導することに成功したという。この小型カプセルには、磁石・LEDライト・超音波トランスデューサー・カメラが組み込まれ、消化管モデル内壁の構造を外部コンピュータに転送できた。特筆すべきは、カプセルの操作には専門的技術を要さないこと、AIを利用した適切な部位の撮影および移動ルートの確保を実現していること、などが挙げられる。
本研究での消化管モデルは豚などが用いられ、現時点で動物実験の域を出ないが、人体に対する技術的応用は困難ではない。Becker’s Health IT & CIO Reportの報道では、研究を率いたSandy Cochran教授の言葉として「近い将来、この技術が日常診療レベルに取り込まれ、消化器疾患の早期発見とモニタリングに使われることを望んでいる」と述べた。