病院内は患者の状態をモニタリングする電子機器で満たされている。無駄で頻繁なアラームに晒された医療者には、重大な知らせを見逃したり、判断が鈍くなるような反応が起きる。その現象は、通称 ’Alarm fatigue’(アラーム疲労)と呼ばれ問題視されてきた。特に集中治療室(ICU)ではアラームが救命に直結するリスクも高く、看護師らのストレスが高まり、医療の質を低下させる可能性が指摘されている。
米メディアNBCの報道によると、集中治療室へAI導入が進む中、アラームの質が改善されて、患者と医療者の双方にメリットが生じている。既存の単純なルールにしか従えない監視システムは誤検出率が高かった。とあるICUでは平均90秒ごとのアラームに看護師が反応し、アラームの3分の2が誤っている状況にあった。FDAは2005-2008年の間にアラーム関連の問題で500人以上の患者が死亡したと警告している。それらアラーム疲労の影響もうかがえる状況をAIアシスタントが改善しつつある。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)は、医療AIを推進する現場のひとつである。学習を受けたAIアシスタントは、偽の緊急フラグを無視して、確実性の高い警告を出す。また、既に起きている問題の緊急警告ではなく、重大イベントを事前に予測して通知するメッセージならば、事態を穏やかに受け取れる。同大学の救急医Christopher Bartonは「誤ったアラームが減少し、仕事が速く効率化されていると、病棟の看護師から肯定的なフィードバックを受けている」と語った。