クラウドコンピューティングとIoT化はあらゆる領域で急速に浸透したが、近年はよりシステムの末端に近い場所(エッジ)でデータ処理を行おうという「エッジコンピューティング」が注目されている。現場に近いエッジデバイスにAIモデルを実装したものが「エッジAI」と呼ばれ、クラウドを利用せずエッジ側のみで学習から推論までの処理を完結するものも見られるようになった。
では、医療におけるエッジAI導入の利点はどこにあるのか。まず挙げられるのはネットワークの接続性を改善する点にある。つまり、あらゆる処理をクラウドベースで行うシステムに比較して、膨大な現場データの処理を部分的にエッジデバイスに負わせることにより、上位システムやネットワークに対する直接的な負荷の軽減につなげることができる。ヘルスケアの舞台はITインフラの発達した都市部だけではないため、特に医療過疎となりやすい僻地などにおいてもその有用性が際立つことになる。また、今後益々の発展が予測される遠隔診療やロボット手術においては、レイテンシーの厳密な制御が欠かせない。高度に要求されるその水準をクリアするには、エッジAIの活用が必要となることは容易に想定されている。
Intelは先週、オンライン学習プラットフォームのUdacityと提携し、エッジAIの学習コースを開発者向けに提供することを公表した。エッジデバイスへのAIモデルの直接展開を最適化するには、電力やネットワーク帯域幅、レイテンシー、多様なコンピューティングアーキテクチャなど、独自の制約に対する十分な知識が必要となる。今後、医療AI領域で普遍的に求められるスキルとなる可能性があり、参入を考える開発者にとって現時点でのエッジAI技術の学習効果は非常に高いと言えるだろう。