AIが心臓移植の成功率を高める

米国立衛生研究所(NIH)は、「心臓移植を受ける患者の適合性を評価するAI」の開発プロジェクトに対し、320万ドルの研究助成を行うことを決めた。同研究はペンシルベニア大学やケースウェスタンリザーブ大学、クリーブランドクリニックなどからなる共同研究チームにより、4年間に渡って推進される大型プロジェクトとなる。

ドナー臓器を拒絶する免疫反応は、心臓移植における最も重大なリスクのひとつである。これまでも種々の予測手段が検討されてきたが、その予測精度は十分ではなかった。ペンシルベニア大学の公表によると、研究チームはAIを利用し、心臓生検組織画像から潜在的な拒絶可能性を分類するグレーディングを実現しようとしている。拒絶反応の事前予測はその後の治療プロトコルの最適化に直結するため、患者の予後改善・合併症予防にも期待が大きい。また、研究プロセスは免疫担当細胞による拒絶メカニズムの精緻な理解にもつながるため、より個別的な医薬品開発にもつながる可能性を指摘する。

研究を率いるKenneth Margulies医師は「この研究は、心臓移植の重要な要素である”患者の転機の改善”に焦点を当てている。末期心不全患者の増加が止まらない今、新規研究計画として正しいステップとなるものだ」と話す。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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