InnerEyeは、Microsoft Research Cambridgeの研究プロジェクトであり、医療画像の自動定量分析に向けたディープラーニングツールを構築している。このほど、英ケンブリッジにあるAddenbrooke’s Hospitalでは、世界に先駆けてこのInnerEyeを導入することを発表し、大きな注目を集めている。
Microsoftが9日行ったニュースリリースによると、同院ではがん生存率の改善を目的として、InnerEyeプロジェクトから生まれたAIシステムを実臨床導入することを明らかにした。このシステムにおいては、医療画像上で悪性腫瘍が疑われる部位を自動検出し、正常部位との境界を明確化した上で強調表示することができる。より早期の発見・治療介入を実現することが期待されており、結果的に生命予後を改善し得ると関係者は意気込む。同院のがん治療専門医であるRaj Jena氏は「臨床医は患者の生存率を改善し不安を軽減するため、できるだけ早く有効な治療を開始したいと考えている。機械学習ツールの利用によって、多忙な臨床医の時間を節約し、患者を迅速に適切な治療に導くことができるだろう」と話す。
なお、本AIシステムの臨床導入に際しては医師によるチェックを必須としており、システム単独の解析結果によるがん治療導入は計画されていない。一方で、「医療画像AIの民主化」を目指すMicrosoftは、InnerEye Deep Learning ToolkitをGitHubのオープンソースソフトウェアとして提供しており、このMLライブラリと技術コンポーネントは多くの開発者・研究者が自由に利用することもできる。