ディープラーニングとCOVID-19画像

COVID-19は歴史上にも稀有な公衆衛生上の危機である。重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされ、世界的な累積死亡率は7.2%とも推定される(Onder et al., 2020)。危機の拡大に伴い、症例トラッキングに主眼を置いた国際的なデータシェアリングシステムへの需要が高まるなど、ヘルスケアデータを巡る環境変化は急激となった。そういったなか、COVID-19の診断・治療に資するAI開発を目的とした医療画像の収集・配布を行う大規模な取り組みもみられるようになるなど、画像解析に事態解決の糸口を見出そうとする動きも盛んになっている。

今月、テキサス小児病院とスタンフォード大学の研究チームがIntelligence-Based Medicineに公表した研究論文では、COVID-19に関する画像解析においてディープラーニングが果たすべき役割について概説されている。論旨としては、既存の診断方法であるPCR検査の偽陰性率が見過ごせないほどに高値であること、それに伴って補助的診断ツールとしての胸部画像所見は一般的かつ有用であること、そして解析アプローチの主役となるのがディープラーニングを軸とするAI技術であることだ。現状、最も高頻度に利用されている胸部単純レントゲン写真については、COVID-19スクリーニングの観点からは比較的高い特異度の一方で十分な感度が保たれておらず、AIによる精度改善の余地があるとする。また、臨床的意思決定支援ツールにおいて、COVID-19イメージングのディープラーニングモデルを組み込むことの有効性にも言及している。

Cellに発表された張らの研究によると、胸部CT画像からのCOVID-19肺炎の識別については、AIが既に経験豊富な放射線科医と同等の水準であることも報告されている。同様に王らの研究では、COVID-19肺炎における病変像の極めて高精度なセグメンテーションを達成した。さらに、画像パラメータに臨床データを加えることで有効な予後予測モデルの導出にも種々つながっており、多面的な研究の進捗に伴って、ディープラーニングがCOVID-19イメージングに果たす役割の大きさは日毎に明らかになっている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。
The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. 岡本 将輝
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. 杉野 智啓
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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