EU Innovative Medicines Initiative(IMI)の新しいコンソーシアムは、医療AI開発の加速を目的として、欧州最大の病理画像データベースを構築する。欧州の主要な研究拠点や医療機関、製薬企業群を数多く抱き込んだ巨大プロジェクトは、6年間で7000万ユーロが投資される予定で、まさに病理学の新時代を告げるものとして期待されている。
病理学は悪性腫瘍をはじめとして多くの疾患の診断・治療・予後評価に寄与するが、その作業の大部分が「専門医による顕微鏡下での組織サンプル検査」という定性解釈に依存している。近年ではデジタル化の波が病理分野にも及び、病理スライドの電子化が急速に進んだ。このことによってAIの適用可能性が格段に向上し、現在では病理診断の自動化・定量評価を目指したAIベースの研究開発が世界規模で多面的に進んでいる。
オランダ・アイントホーフェン工科大学が15日明らかにしたところによると、「BIGPICTURE」と呼ばれるこのプロジェクトでは、AI開発を目的とした大規模な病理画像リポジトリの構築を目指すという。関連するインフラの整備と、患者プライバシーを保護する法的・倫理的な環境の構築から始め、初期セットのデジタルスライドには人間と実験動物から300万枚を収集する予定とする。また、実臨床や研究、AI開発の支援を行う機能をシステムに実装するため、独自の研究も開始する。病理AIが高い精度を持ち、極めて一般的に活用される世界となるのはもう遠くはないはずだ。