病理学におけるAIは黎明期にあり、米食品医薬品局(FDA)から承認されたAIデバイスは、血液・体液中の細胞の分類や、子宮頚部組織のスクリーニングなど一部に限られている。今後の可能性を感じる研究室レベルの発表には、肺がん・脳腫瘍・乳がん・前立腺がん・膀胱がんといった各がん種の分類と悪性度判定、さらには予後予測や再発予測といった内容がある。
バージニア大学医療センター(UVA Health)のニュースリリースでは、同施設の専門チームによって発表された「病理学でのAI/機械学習」に関する概説論文を紹介している。米国病理学会のジャーナル Archives of Pathology & Laboratory Medicineに掲載された同論文では、出版済みの病理学AI研究を網羅的にレビューし、将来的な可能性・潜在的な障害を考察し、AIを病理学分野で最大限に活用するための提言を行っている。
同論文の著者らは、人間の医師の判断力や知識をAIが代替するのではなく、補完して強化する「拡張知能(augmented intelligence)」という表現で同分野の目標を設定し、同様の見解を示した米国医師会の声明に賛同している。UVA Healthの臨床検査情報学のディレクターであるJames H. Harrison Jr.氏は「病理医は近い将来、AIシステムの選択・検証・展開・使用・監視を行っていく必要があり、それらシステムの長所と短所、および効果的な管理の技術を学ぶ必要があります。いつAIに頼るべきか、いつAIを疑うべきか、AIをうまく機能させ続けるにはどうすればよいか実践的な理解が必要になるでしょう」と語る。
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