医療従事者の負担軽減のため、資材搬送や物資補充の業務など医療現場で働く自律移動型ロボットの利用ケースが増えている。しかし、救急の治療室など人の流れが過密な場所や、一時的であれ患者が廊下に配置されるような環境では、ロボットが治療の妨げにならないように配慮するナビゲーションシステムが必要となる。
5月30日~6月5日まで、中国西安で開催予定の学会 International Conference on Robotics and Automation(ICRA 2021)では、米カリフォルニア大学サンディエゴ校のチームによる研究成果「救急部におけるモバイルロボットのソーシャルナビゲーション」が発表される。同研究では、「Safety Critical Deep Q-Network(SafeDQN)」というAIシステムによって、空間内の人の集まり、人がどれだけ速く・急に動いているかをアルゴリズムが判定し、その邪魔にならない移動経路をロボットへ指示する。アルゴリズムは、「Trauma: Life in the ER」や「Boston EMS」といったYouTubeにアップされている医療系のドキュメンタリー番組など、約700本のビデオセットから訓練された。
研究チームによると、SafeDQNは従来のナビゲーション手法3種と比較し、救急部を模擬した環境で、最も安全かつ迅速な移動経路を生成できた。人間が中心となる環境で動作する「ソーシャルロボット」にとって、安全性は最も重視される要素である。同システムの発展によって、複雑な病院環境とそこで働く人々の活動を理解して動くことのできるロボットが、患者の生命予後改善に貢献する将来像が期待される。
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