AIによる高齢者の疼痛評価

高齢者ケアにおける疼痛評価は容易ではない。疼痛は本質的に主観的であるが故に定量化が困難で、現代においても臨床現場ではその評価を「観察」と「申告」に基づいている。ただし、高齢者は認知症を含む種々の背景疾患を持つため、感情の発露、意思の表明が時として不十分となる。このことは疼痛評価と管理を難しくしており、不適切な疼痛治療は生活の質低下に直結する。

表情分析によって疼痛を客観評価するAIアプリ開発を行うPainChekはこのほど、「高齢者ケアにおける現代の疼痛評価」と題した詳細なレポートを公開した。ここでは、既存のゴールドスタンダードと言える疼痛管理を「テクノロジーを利用することでどうサポートできるか」に焦点を当てた解説がなされており、疼痛評価をいつどのように実施するかのガイダンスも併せて提供する。PainChekアプリは、臨床スタッフが検出できない「微妙な表情変化」を評価することで、鋭敏かつ正確な疼痛評価を実現するとし、精度95%・感度96%・特異度91%を謳う。

5月にはPainChekアプリのアップグレードが発表されており、豪州・英国で実臨床導入の拡大を続ける同アプリは、ユニバーサル疼痛評価ソリューションとしての立ち位置を確かなものにしようとしている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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