乳がんは米国女性の死亡原因第2位であり、早期がんに対する有効な予後予測バイオマーカーの確立とそれによる適切な治療戦略策定が求められてきた。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のグループは、AI手法で乳がんの治療後再発を予測するバイオマーカーを特定する研究を行っている。
同大学のリリースによると、研究では早期のエストロゲン受容体陽性(ER+)浸潤性乳がん(IBC)において、生検検体のHE染色画像に機械学習を適用し、「コラーゲン線維の配列がER+ IBC患者の生存期間の予測に有用である」ことを示した。解析の中で、生存期間が短い患者では、コラーゲン線維の配列がより秩序立っていることが判明している。特殊なコラーゲン染色や顕微鏡読影を必要とせずに、汎用的なHE染色でER+ IBCの予後予測ができるバイオマーカーとして、構築されたモデルの活用が期待される。研究成果はnpj Breast Cancer誌に掲載された。
同研究では、逆に「コラーゲンの配列が乱れたり壊れていることで予後が良くなる」ことも示されている。同研究グループのひとりAnant Madabhushi教授は「コラーゲンの『高速道路』がひどい状態なら腫瘍の移動が難しくなるが、整理されていれば腫瘍のヒッチハイクは簡単になる」と例えて解説している。同手法により、高度な画像処理顕微鏡をもたない病院でも、単純な染色スライドのデジタル画像による乳がん予後予測が病理医の日常業務として確立されるかもしれない。
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