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子どもの顔写真から遺伝性疾患をスクリーニングするAI研究

染色体や遺伝子に変化を伴い出生する疾患群(ダウン症候群・ウィリアムズ症候群・ヌーナン症候群など)は顔の外観に特徴が現れる。遺伝学的スクリーニングへのアクセスが限られている低・中所得国でもそれらの診断が可能となるよう、小児の顔写真から機械学習ツールで疾患群をスクリーニングする研究が発表されている。

Children’s National Hospitalを中心に行われた同研究は、学術誌 The Lancetに掲載されている。対象とした28カ国2,800人の小児には、128種の遺伝性疾患をもつ1,400人(ウィリアムズ症候群17%・ダウン症候群16%など)が含まれている。子どもたちの顔写真から深層学習モデルが構築され、結果として遺伝性疾患の検出精度は88%、感度90%、特異度86%が達成された。

遺伝子検査には多額のコストがかかるほか、低所得で医療資源が限られ孤立したコミュニティでは、早い段階で遺伝性疾患を発見するための専門家も不足する。研究グループは「各種遺伝性疾患の生存率には人種的・民族的な格差が存在しており、今回公表した技術によって遺伝学的スクリーニングという医療資源の民主化に向けた一歩としたい」とする。Children’s National Hospitalは医療機器メーカーMGeneRx社と同技術についてライセンス契約し、技術の強化を進めていく。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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