米スティーブンス工科大学やラトガーズ大学などの共同研究チームは、スマートフォンのセンサーデータを利用し、実世界環境での大麻中毒エピソードを特定する機械学習モデルを構築した。研究成果は短報としてDrug and Alcohol Depedence誌に収載され、中毒患者の検出と管理に新たな可能性を示している。
チームの研究論文によると、週に2回以上の大麻使用があるペンシルベニア州ピッツバーグの若年成人(18-25歳)を対象として、最大30日間に渡るデータ収集を行ったという。これには1日3回の電話による聞き取り調査、自己申告によると大麻使用報告(使用時刻や主観的な大麻酔いの程度等)、スマートフォンセンサーによる連続データ取得などが含まれていた。チームはこれらに基づき、大麻酔いの程度を3段階(酔っていない/わずかに/中等度)に識別する複数の機械学習モデルを検証した。結果、大麻中毒者の日常を反映する可能性のある「時間」を特徴量に組み込むことで、90%の識別精度を達成した。また、主観的な大麻中毒を検出するためのスマートフォン上の重要な指標として、「移動」(GPS)と「動き」(加速度センサー)が同定された。
本研究は「実世界環境における主観的な大麻中毒を、スマートフォンのセンサーを用いて検出することが可能」であることを明らかにした。今後、大麻の使用頻度がそもそも低い群や他の年齢層を含め、多面的なモデルパフォーマンスの評価へと進む必要がある。一方、スマートフォンの普及率と世界的な中毒者数を考えれば社会実装による直接的インパクトが大きく、期待の大きい研究テーマと言える。
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