「ワクチン接種ためらいの地域性」をTwitterから予測

COVID-19ワクチン接種が進む中、各国の公衆衛生当局はワクチン未接種の人々が地理的にどこに分布し、なぜワクチンを接種していないか解明しようとしている。陰謀論・不信感・副反応・恐怖心・アクセス困難など、接種ためらいの種類に応じた支援活動を行うには指針となるデータが必要だが、従来の調査方法にはコストや時間に課題があった。

南カリフォルニア大学のAI研究者らは、Twitterを分析することでワクチン接種の躊躇を評価し、米国の都市圏で「郵便番号(ZIPコード)ごとのためらい度合い」を予測する研究を行っている。成果はPLOS Digital Health誌に発表された。TwitterのオプションにGPS情報を有効にする機能があり、大都市圏ほどユーザーがGPSを有効にする頻度が高いことに着目し、それら地域で郵便番号レベルでのワクチン接種ためらいを予測するモデルを構築した。その結果、郵便番号内の平均住宅価格に代表されるような、収入・教育レベルを反映する一般的特徴を用いた既存調査と比較しても、Twitterデータ解析モデルのパフォーマンスが上回ることが示された。

代表的なサンプル回答者にYes/Noでワクチンためらいを質問するような従来調査は、コスト・時間の問題のみならず、政治的偏向などによって無回答率が悪化し、サンプルサイズが小さくなってしまう傾向も認められる。ソーシャルメディアから潜在的なワクチン躊躇を抽出する本研究は、ワクチンやCOVID-19に無関係のツイートが一部に混在しても、その有効性が維持されることが確認されている。解析で得られた情報をもとにしたハイリスクアプローチ、つまり、ワクチン未接種の可能性が高くなるターゲットを絞り、接種に前向きになるような信頼できる情報を局所的にも提供することが、次段階の公衆衛生施策には必要となる。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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