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ゲノムとAIによる胃がんの治療効果予測

胃がん治療において、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬に対する患者の治療反応を正確に予測するバイオマーカーは不足している。米メイヨークリニックの研究チームは、ゲノムシークエンスとAIによって、「胃がん患者が治療に対してどのような反応を示すか」を予測する機械学習アルゴリズムを構築した。研究成果はNature Communicationsからこのほど公開された。

チームの研究論文によると、独自の機械学習アルゴリズムNTriPathを用い、胃がんに特有となる32の遺伝子からなるシグネチャーを同定したという。次に567人の患者において、これら32遺伝子の発現レベルに対する教師なしクラスタリングによって、予後を決定する4つの分子サブタイプを決定した。最後に線形カーネルを用いたサポートベクターマシンを構築し、5年全生存の予後を示すリスクスコアを生成し、3つの独立したデータセットを用いてこのリスクスコアを検証している。得られた分子サブタイプは、胃切除後の5-FUとプラチナ製剤の補助療法や、転移・再発した患者における免疫チェックポイント阻害剤への反応を予測することも明らかにされている。

著者らは「32遺伝子のシグネチャーは、胃がん治療における有望な予後予測バイオマーカーである」ことを強調する。今後、大規模な患者コホートを用いた前向き検証によって、その臨床的有効性の程度を確定させることが期待されている。

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