肝細胞がんは、診断時に根治的な切除術が施行可能な症例は全体の3分の1ほどに限られるが、ラジオ波焼灼療法(RFA)や肝動脈化学塞栓療法(TACE)など治療選択肢は多岐にわたる。肝内で局所再発を繰り返しやすいという特徴もあり、患者ごとに個別化された治療方針選択のためには、予後を高精度に予測する意義がある。韓国・釜山大学校のチームは、「機械学習で肝細胞がん患者の生存率を予測する研究」を行っている。
BMC Gastroenterologyに掲載された同研究では、韓国内10,742名の肝細胞がん患者データを用い、複数の機械学習アルゴリズムで生存期間の予測を行った。検証の結果、自然勾配ブースティング(NGBoost: Natural Gradient Boosting)モデルでは、外科切除で「60ヶ月以上」の生存期間を得た患者群で精度83%・正確度84%・感度95%・F1スコア89%を達成した。一方、外科切除で「60ヶ月未満」の生存期間の患者群では精度79%・正確度82%・感度87%・F1スコア84%であった。またTACEの治療群でも同等の予測性能を発揮していた。
本研究では「機械学習アルゴリズムを用いた肝細胞がん患者の予後予測モデルを開発することで、肝機能や腫瘍の状態に応じた症例ごとの最適な治療法を検討することができる」と結論づけている。チームでは、標準化された多施設データに対するアクセスの制約を、韓国国内で解消していくことを今後の優先課題と捉えるとともに、予測モデルの洗練と社会実装を目指している。
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