医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究AIが大腸内視鏡検査での見落としを防ぐ

AIが大腸内視鏡検査での見落としを防ぐ

大腸内視鏡検査においては、重要所見を目視で確認するため、一定の見落としが発生することは避け難い。このような「知覚のピットフォール」をサポートするため、伊・英・米の国際共同研究チームは、AIによる大腸内視鏡支援の可能性を探索しており、このほど最新の研究成果が公表された。

Gastroenterologyからオンライン公開されているチームの研究論文によると、伊・英・米の8施設で大腸がんスクリーニング、またはサーベイランスを受けている患者を対象とし、重要所見の検出を助ける深層学習システムの検証研究を行った。研究デザインとしては、A. 1回目にAI利用内視鏡検査を施行、2回目に通常内視鏡検査(非AI利用)を施行、B. 1回目に通常内視鏡検査を施行、2回目にAI利用内視鏡検査を施行、の2群を設定し、対象者をA群およびB群のそれぞれに無作為に割り付けた。計230名に対して実施された本研究では、AI利用検査を先に行った群では「大腸腺腫見逃し率(AMR)」が15.5%であったのに対し、非AI利用検査を先に行った群では32.4%と有意に高かった。また、5mm未満の病変、非ポリポイド病変でも、AI利用検査を先に行った群でAMRの低下が確認されている。

著者らは「大腸内視鏡検査でのAI利用は、重要所見の見逃し率を約2倍低下させる。また、従来の標準的な大腸内視鏡検査における、微細な病変に対する知覚エラーを有意に減少させることができる」としている。医師の診断を支援するAI活用は急速に広がっているが、一定規模で質の担保されたランダム化比較試験など、近年エビデンスレベルの高い知見の集積が進むようになり、大腸内視鏡領域においても臨床導入はさらなる加速を見せようとしている。

関連記事:

  1. NEC – 大腸内視鏡画像から腫瘍性病変を識別するAIシステム
  2. オハイオ州立大学 – 大腸内視鏡AIシステムを実臨床導入
  3. 食道がん早期検出に向けたAI診断プラットフォーム
  4. ラジオミクスとAI – 大腸がん保存的治療への反応性
  5. 散乱光で「隠れた物体を可視化」するホログラフィックカメラ
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事