COVID-19のパンデミックは多くの中低所得国に打撃を与え、広範な食糧不安と生活水準の急激な低下を引き起こしている。このような危機に対応するため,世界各国政府や人道支援組織は15億人以上に社会的支援を行なってきた(参照)。一方で、この種の人道支援プログラムを運営する際、ターゲティングは常に重要な課題であり、利用可能なデータから「最も支援を必要としている人々」を迅速に特定する手段が求められている。
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、機械学習を用い、「携帯電話ネットワークなどから得られるデータから人道支援ターゲティングを改善できる」とする研究成果を発表した。本研究論文はNatureからこのほど公開されている。チームの研究論文では、トーゴ共和国(西アフリカの一国、ギニア湾に面する)における政府主導の支援プログラムを対象としている。2020年4月に先行してスタートしていた「Novissiプログラム」(非正規労働者に対する金銭的援助)を、農業従事者を主体とする最貧困層のトーゴ住民にまで拡大することを研究者らは目指した。研究チームはまず、衛星画像データからトーゴの国土をグリッドセルで分割し、2.4km四方のセル内に居住する人々の相対的な富裕度を推定した。次に、トーゴの主要な携帯電話会社2社から提供された携帯電話使用データと既存の広範な調査データをマッチングさせ、機械学習モデルによって「加入者の推定使用量から貧困パターン」を個別検出することを可能とした。アプローチ評価においては、トーゴ政府が従前検討していた一般的な地理的ターゲティングと比較して、チームの機械学習アプローチは「対象者除外の誤り」を 4~21%減少させるなど、より適切なターゲティングを実現していることが示された。
著者らは「貧困に関連する従来のデータが欠落していたり、古くなっていたりする状況において、携帯電話データなど新しいデータソースと機械学習手法を組み合わせることで、旧来の人道支援ターゲティングの方法を補完できる可能性があること」を強調している。
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