医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療AIがもたらす影響・問題点Nightingale Open Science - 無償利用可能な「AI開発向け大規模医学データベース」

Nightingale Open Science – 無償利用可能な「AI開発向け大規模医学データベース」

カリフォルニア大学バークレー校の医師で、AI科学者でもあるZiad Obermeyer氏は2021年末、Nightingale Open Scienceを立ち上げた。これは、医学における未解決課題へのAI適用を見据え、多面的にキュレーションしたユニークな医学データセットである。

データセットには、ハイリスク乳がん、心肺停止、骨折、COVID-19といった様々な患者における、X線画像・心電図波形・病理標本など40テラバイトに及ぶ医療画像が含まれる。各画像には、がんステージや重篤度、人工呼吸器を必要としたかどうかなど、患者の医学的転帰を含めたラベル付けがされている。主に米国・台湾の医療機関と連携し、2年をかけて構築したこのデータセットは現在、無償利用を前提として公開されている。また、医学的多様性を高度に反映させるため、今後数ヶ月に渡って、ケニア・レバノンでのデータ取得にまで拡大する予定としている。

AIコミュニティはビッグデータの収集とデータベースの構築を分野横断的に進めているが、多くの医療用AIアルゴリズムが、既存の健康格差を増幅する可能性が示唆されている。これを防ぐための「多様で質の高いデータ収集と公開」を続けること、また現在、一部の企業・組織に閉じ込められる情報資源を一般に広く開放することにより、公共の利益に資するプラットフォームとすることをObermeyer氏は目指している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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