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症状からインフルエンザとCOVID-19を見分けるAI研究

COVID-19パンデミックにおいて、医療機関の検査能力を超えた過重な負担が話題となり続けた。発熱や呼吸器症状は、インフルエンザをはじめとした他の感染症にも高頻度にみられる一般的症状であるが、検査リソースが不足する場合には、一定割合をやはり「症状によるスクリーニング」に頼らざるを得ない。米ジョージ・メイソン大学の研究チームは、「インフルエンザ感染症の季節性と有病率データを取り入れ、症状からCOVID-19との鑑別を行うAIアルゴリズム」の開発を進めている。

同大学の発表によると、アルゴリズムは中国のCOVID-19患者774名と米国のCOVID-19患者273名の臨床データ、および米国のインフルエンザ患者2,885名とインフルエンザ様疾患884名のデータを基に、両疾患を識別する機械学習モデルをトレーニングした。結果、症状に関する情報からCOVID-19をAUC 0.79という比較的高い精度で識別することができた。インフルエンザの流行期以外では、発熱がCOVID-19の強い予測因子となり、インフルエンザの流行期では、咳症状がCOVID-19よりもインフルエンザを予測する因子となることが示された。また、COVID-19診断においては「症状のクラスター」がより重要であることも明らかにされている。同研究の最新の成果はQuality Management in Health Careに掲載された。

ジョージ・メイソン大学のインタビューに対し、研究責任者のFarrokh Alemi氏は「アルゴリズムが役に立つとはいえ、臨床医が治療を提供しながらこのような計算を行うには複雑過ぎる。現場で簡易に利用できるウェブベースの計算ツールを作成し、臨床医が診察前に推定診断にたどり着くことが次のステップとなる」と語り、来るパンデミックに備えた現実的なソリューションの提供をチームでは目指している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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