大腸内視鏡検査におけるAIの活用は、前がんポリープの検出率を高め、長期的な大腸がん予防に貢献する可能性がある。一方、スクリーニング目的の大腸内視鏡検査におけるAIツールの導入が「大腸がん発症率および死亡率に及ぼす低減効果」,またその「費用対効果」は明らかにされていなかった。
The Lancet Digital Healthからこのほど公開された研究論文では、米国の50-100歳、10万人の仮想コホートに対してマルコフモデルマイクロシミュレーションを実施し、内視鏡による大腸がん検診にAIを用いた場合と用いない場合での効果を比較している。結果、AIツールを利用しない通常検査では大腸がん罹患率の相対減少が44.2%であるのに対し、AIツールを利用することで48.9%の減少と、4.7%の有意な改善が確認された。同様に、大腸がん死亡率では3.6%の改善効果をみていた。AIツールの導入によって、年間7,194例の大腸がん症例、および2,089例の関連死を追加的に予防しており、年間あたり2.9億ドル(日本円にして370億円超)の医療費が節約される試算となる。
研究者らは「大腸内視鏡検査におけるAIツールの導入は、大腸がん罹患および死亡を予防するための費用対効果に優れた戦略であることが示唆された」として、研究知見の医療政策的意義を強調している。
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