自閉スペクトラム症(ASD)は月齢18ヶ月前後での確定診断が可能とされるが、米国では診断の遅れが問題となってきた。その一因には、ASD評価における需要の増加が専門家のキャパシティを上回り、滞留期間が長くなっていることがある。ASD診断の補助としてAIツールを用いることには、各種先行研究から大きな可能性が示されている。
カリフォルニア大学アーバイン校などの研究チームは、3つの異なる入力データ(介護者への質問票、短いホームビデオ2本、プライマリケア医療者への質問票)から「ASD陽性/陰性/不確定」のいずれかを識別する機械学習ソフトウェアの性能を検証している。研究成果はnpj Digital Medicineからこのほど公開された。研究では、発達遅滞が懸念される18-72ヶ月児のコホート(計425名、女性36%、ASD有病率29%)に対するソフトウェアの出力結果を、複数の専門家による診断と照合した。その結果、陽性適中率(PPV)が80.8%、陰性適中率(NPV)が98.3%であり、このツールでASD陽性/陰性の「確定出力」ができた患者は全体の31.8%で、感度98.4%、特異度は78.9%であった。なお、装置の「不確定出力」は、入力情報が不十分である場合のリスクコントロールとして機能させている。実際、この不確定出力による制御を無効化すると、感度51.6%、特異度18.5%まで低下するとしている。
研究グループは「本AIツールが高い精度でタイムリーなASD診断を実現する」点に触れ、プライマリケアにおけるASDの見逃しを大幅に抑制できる可能性を強調する。これはASD児への早期介入、および専門家リソースの効率的利用を促すものとなり得るため、臨床実装を見据えたさらなる検討が進められている。
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