滲出性中耳炎(OME: Otitis Media with Effusion)は中耳腔内に細菌性の滲出液が貯留する疾患で、通称「Glue Ear」とも呼ばれ、小児における聴覚障害の原因ともなる。耳痛や発熱といった感染症状を認めない場合、診断の遅れをきたすことも少なくない。鼓膜に音圧を加えることで中耳腔内の液体貯留の検出を可能とする検査法「ティンパノメトリー」において、AIツールを適用することでOMEのより迅速で正確な診断を狙った研究を、英カーディフ・メトロポリタン大学のチームが進めている。
Scientific Reportsに発表された同研究では、ティンパノメトリー検査で加えられる音の周波数に0.25〜8.0kHzの広帯域を使用する「Wideband Absorbance Immittance(WAI)」に基づき、中耳のエネルギー吸収比率を測定した上で、得られたデータに対して機械学習アプローチによる解析を行っている。WAIの測定は、中耳障害の診断に適した客観性・再現性があるとして利用されてきたが、複雑さのためにデータ解釈が比較的困難であることが知られていた。今回のAIモデルでは、OMEの自動分類において75-82%程度の精度を達成しており、WAIに基づくOMEの自動識別モデルが臨床的に有効である可能性を著者らは指摘している。
本技術はより迅速で正確、かつコスト効率の良い「専門家以外でも利用可能なOME診断ツール」の開発に結びつく可能性があり、今後の研究開発への期待は大きい。
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