COVID-19の典型的症状は、感染から発症まで数日単位の時間差を認めることがあり、その期間における無症候感染者からの感染拡大が課題となっている。近年広く普及した活動量計やスマートウォッチから得られる生理的データの変化に基づき、無症候のCOVID-19感染を検知する可能性が注目されている。
リヒテンシュタイン国内の疫学調査「GAPP study」を舞台として、市販のウェアラブル医療機器「Ava bracelet」による「COVID-19感染の検出性能」に関する検証結果が、BMJ Openに発表されている。Ava braceletは呼吸数・心拍数・心拍変動・手首皮膚温を測定するブレスレット型デバイスで、元来は排卵期女性に対し、妊娠可能性の高い日を機械学習アルゴリズムで検出する製品である。同研究の参加者1,163名は夜間睡眠時にブレスレットを装着していたが、観察期間中に127名(11%)がCOVID-19陽性となっており、発症29日以上前からブレスレットを装着していた66名のデータから、COVID-19感染を検出するAIモデルが構築された。検証の結果、症状発現2日前までの感染検出に関し、トレーニングセットで感度73%、テストセットで感度68%と示された。
著者らは「ウェアラブルデバイスが、COVID-19の無症候感染検出の有望なツールとして機能する可能性が示唆された。この技術はパンデミック時に利用しやすい低コストな手法となる。AIとデバイスの組み合わせが、個別化医療の限界を押し広げ、コミュニティ内のウイルス感染を減らす可能性がある」と考察している。同モデルは現在、オランダにおいて2万人を対象とした大規模集団で試験を進めており、本年後半に結果が出る予定としている。
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