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肝細胞がん治療のAIトラッキングシステム

肝細胞がん(HCC)治療には複数分野の専門家による連携が欠かせず、治療の適時性を担保するには有効なフォローアップの存在が前提となる。米国では、HCCのベースとなる肝硬変の原因はC型肝炎ウイルスとアルコール使用が一般的だが、これらには精神疾患の併発や医療システムの障壁が伴い、タイムリーなケアへのアクセスが困難な場合も少なくない。

米イェール大学などの研究チームは、AIベースの症例トラッキングシステムにより、HCC治療の適時性が改善されるかを検証した研究成果を明らかにした。PLOS Digital Healthから今月公開された研究論文によると、研究チームは、退役軍人病院において「電子カルテと連動した異常識別・追跡システム」を導入している。このシステムは全ての放射線レポートをレビューした上で異常症例のキューを生成し、期日と自動リマインダーを伴う治療イベントのキューを維持するというもの。このシステム介入により、診断から治療までの平均期間が36日短縮されるとともに、より早いステージで診断されたHCCの割合が有意に高くなることも明らかにした。

著者らは「リスクの高い集団におけるケアギャップを体系的に解決する、実用的な介入の可能性を実証したこと」を強調しており、HCCスクリーニングを実施している医療機関に対し、システムの臨床導入を進める可能性を示している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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