パーキンソン病(PD: Parkinson’s Disease)は、振戦や動作緩慢、姿勢保持障害などの運動障害を主症状とする、世界で2番目に患者数の多い神経変性疾患である。PDの治療は「患者の主観的な報告」と受診時の理学所見を拠り所として、数ヶ月毎に治療内容を見直す程度が一般的であり、客観的なリアルタイムデータに基づいた個別化治療の普及には至っていない。
英PD Neurotechnology社は、パーキンソン病患者向けの連続モニタリングシステム「PDMonitor」を開発し、ウェアラブル技術によってPD患者の日々の症状を追跡することを可能にした。PD治療の薬物コントロールが不良となったケースでも、COVID-19パンデミックを経て「症状を把握するための一時入院」が困難な状況が多く散見された。In Vivo誌での研究報告では、在宅でのPDMonitor使用を提案された症例が紹介されている。ウェアラブルセンサーによる連続モニタリングで、PD症状が悪化する時間帯を区分けしたところ、同患者では症状のON/OFFの切り替えが速く、運動合併症が午後に顕著に現れることが検出された。その結果に基づく薬物療法の最適化によって、QOL向上につながったとしている。
PDmonitorは現在、英国民保健サービス(NHS)で使用するために英国国立医療技術評価機構(NICE)での評価が行われている。この技術によって、PD患者の遠隔モニタリングを容易にし、診察に出向くストレスや不安を軽減することや、診察予約の低減によってNHSのリソースを解放することなどが期待されている。
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