進行した喉頭がんに対する外科的切除術は、患者の声色を大きく変化させてしまう。手術後に残存した喉頭構造で生み出す「代用音声」は生活の質に関わるが、その音声の評価は、専門家による主観的評価に依存していた。リトアニア・カウナス工科大学の研究チームは、AIによる代用音声の新しい評価指標の導入に取り組んでいる。
Applied Sciencesに発表された同研究では、患者の代用音声に対して、音声信号のエネルギー量・周波数帯域といったパラメータを解析するモデルを開発し、「Acoustic Substitution Voice Index(ASVI)」と呼ばれる指標を開発した。ASVIを、従来の専門家の聴覚・知覚による代用音声評価と比較したところ、有意に強い相関を認め、臨床的に同等の評価が可能であることを示している。ASVIアルゴリズムは応答速度も高速であるため、患者に効率的な自動評価プロセスを提供することができる、とチームでは期待している。
研究チームのRytis Maskeliūnas教授は「これまでの医療現場では、代用音声を客観的かつ定量的に評価する適切な方法がなかった。ASVIによる評価を用いることで、音声の悪化に気がついた際には、患者の自宅や専門外の医療機関でも代用音声の医学的評価を行えるようになる。また、ASVIの指標値が良好で、特に他の訴えがなければ、不必要な受診を回避することもできる」と述べた。
関連記事: