世界5大医学誌に数えられるBMJは、医学領域において最も権威ある学術誌の1つだ。同誌は毎年の最終号をクリスマス特集号として無料公開しており、「科学研究の面白さ」を伝えるためのテーマ選択がなされるため、「BMJらしくない論文」が並ぶ号としても知られる(2011年「死神の歩く速さ」、2020年「外科医が自身の誕生日に行う手術の死亡率」など)。
2022年のクリスマス特集号に掲載された論文の1つに、医療AI関連があり、ここでも紹介しておきたい。英国最古の小児科専門病院であるグレートオーモンドストリート小児病院などの研究チームは、放射線科医を標榜するための専門資格である「Fellowship of the Royal College of Radiologists(FRCR)試験」を、AIがパスできるかを検証している。結果、若手放射線科医が平均精度84.8%で模擬試験を10回中4回合格していたのに対し、AIは平均精度79.5%で模擬試験を10回中2回合格していた。
本試験はあくまで1つのAIツールを評価したのみであり、結果を受けて一般化可能性の高い普遍的な知見を抽出するのは難しい。ただし興味深いことに、当初放射線科医らはAIの性能を「実際よりも高く」想定していた。著者らは「種々の医療需要をAIが満たすためには診断精度およびフローについて未開発の部分がある」とした上で、「本研究は、人間による入力がいまだに重要であることを示している」と述べ、AI単独診断はまだ先のこととなる点を指摘している。
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