慢性腎臓病(CKD)の罹患率および死亡率は、高齢化の進展を背景として世界的に悪化傾向にある。中国と豪州の国際研究チームは、眼底画像に基づく「網膜年齢」を加齢バイオマーカーとして採用し、末期腎臓病(ESKD)リスクを予測するAI研究を行っている。
American Journal of Kidney Diseasesに掲載された同研究では、UKバイオバンクに登録された、既往症の無い11,052名、19,200枚の眼底画像から網膜年齢を予測する深層学習モデルを構築した。このモデルを用い、ベースラインでESKDを有しない35,864名の眼底画像を対象として、網膜年齢とESKDの関連を検証した。その結果、モデルの予測した「網膜年齢と実年齢の差」が1年増加する毎に、ESKD発症リスクが10%ずつ増加することが示された。
網膜と腎臓の障害は、炎症や内皮機能障害、酸化ストレスなど共通の病態生理学的メカニズムを有し、双方向的な関連が指摘されている。著者らは、AI技術の導入によって、眼底画像が非侵襲的で費用対効果の高い検査手法として、CKDおよびESKDの大規模スクリーニングに活用される可能性にも言及している。
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