英国では臓器移植の待機患者が約7,000名とされ、特にパンデミック以降、肝移植の待機患者が大幅に増加している。取り出された臓器は一度きりの片道輸送しかできない場合も多く、臓器の質が移植に耐え得るか適切に評価し、迅速に決断する必要がある。移植の恩恵を受ける患者を増やすため、英国民保健サービス(NHS)では「OrQA(Organ Quality Assessment)」と呼ばれる移植臓器の質を評価するAIプロジェクトが始まっている。
プロジェクトに参加しているニューカッスル大学が報じたところによると、OrQAは臓器のダメージ、既往症、血液の洗い流し(臓器灌流)などについて、AI手法でスコア化し、移植医の評価および意思決定をサポートする。技術の概念実証は現在、肝臓・腎臓・膵臓移植で実施されており、2年以内にNHS内でライセンス試験の準備が整うと期待されている。OrQAの本格的運用で、英国内の腎移植患者は年間最大200名、肝移植患者は100名増えるとの試算がある。
プロジェクトリーダーでニューカッスル大学の移植外科医のColin Wilson氏は「これまで臓器摘出時に外科医を助けてくれるツールは何もなかった。OrQAは、移植に関わる全ての人にとってストレスの最も強いタイミングで、最善の決断を下すのを助けてくれるだろう」と語っている。
関連記事: