医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究スマートフォンによる貧血スクリーニング

スマートフォンによる貧血スクリーニング

世界人口の4分の1が罹患するともされる貧血は、最も一般的な疾患の1つでありながら、特に小児期の貧血は感染症への感受性を高めること、認知発達への悪影響などが指摘される。英University College Londonなどの研究チームは、スマートフォンを用いた比色分析により、乳幼児集団における非侵襲的な貧血スクリーニング手法を提案している。

PLOS ONEから3日公開された研究論文によるとチームは、下眼瞼、強膜、および下唇に隣接する粘膜、の3つの関心領域を組み合わせた貧血スクリーニングのための比色アルゴリズムを構築している。アルゴリズム開発においては、環境光の変化を考慮しつつ、関心領域ごとに色度指標を選択する方法を比較検討した。特徴的となるのは、本手法においては画像取得に専門的なハードウェア(カラーリファレンスカード)などは不要で、ごく一般的価格のスマートフォンのみを用いる点となる。構築したアルゴリズムは未見データに対して、感度92.9%、特異度89.7%で貧血(ヘモグロビン濃度<11.0g/dL)をスクリーニングすることができた。

これらの結果は、スマートフォンによる貧血スクリーニング実現の可能性を強く支持するものと言える。本研究では4歳以下のガーナ居住の乳幼児を対象としているが、対象集団を広げた適用可能性を調査することをチームでは次の目標としている。

参照論文:

Feasibility of smartphone colorimetry of the face as an anaemia screening tool for infants and young children in Ghana

関連記事:

  1. スマートフォンカメラで低酸素血症を検出するAI研究
  2. Sklip – 皮膚がんをスマートフォンカメラで在宅トリアージ
  3. スマートフォン動画による自閉スペクトラム症の識別
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事