特許出願でみる「AI開発の勢い」

知的財産事務所のMarks & Clerkが公表した新しい調査レポート「AI report 2023」によると、AI技術の発展について、医療分野は他分野を凌駕しているという。

同レポートによると、医療分野において出願された「AIベースの特許件数」は2022年は2,771件であり、これは2018年から4倍の増加であるという。単独のセクターとしてみると2014年以降、AIベースの特許出願件数における前年比成長率は、全体の成長率を上回り続けている。サブセクターで分類すると、AIを活用した診断(医療画像診断を含む)が最大多数で、これまでの合計は3,018件となっている。一方、創薬分野におけるAI活用では出願件数が減少傾向を続け、2022年にはわずか12件であったことも特徴的となる。ただしこれは、新規の発明が得られていない、または研究開発のトレンドが移っている、という解釈よりは、「創薬のプロセスを秘密にすることを選択する」という長期的な戦略を取るようになった可能性が高い。

欧州特許庁へのAI特許出願は、欧州と米国が引き続き優勢である一方、アジア、特に中国からの出願が増えている。医療業界がAIの取り込みを積極的に始めた時から、医療技術の研究開発への投資は増加し、「AI超大国」になろうとする各国の動きが医療分野においても加速している。

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