医療とAIのニュース 2024
年間アーカイブ 2024
医療画像・テキスト生成モデルの最新研究 – 中国
医療分野におけるAI活用の進展が期待される一方で、高品質な医療画像データの不足がAIモデルの開発や臨床応用を妨げている。この問題を解決するため、中国の研究チームにより、さまざまな臓器や画像モダリティに対応可能な医療画像・テキスト生成モデル「MINIM」が開発された。MINIMは、光干渉断層撮影(OCT)、胸部CT、脳MRIなどを対象に、テキスト指示から高品質な合成画像を生成できることが特徴である。
Nature Medicineに発表された研究によると、同チームは合成画像の品質を臨床医による主観評価と、6つの客観評価でMINIMを検証した。その結果、MINIMは既存の生成モデルを大きく上回る画像生成能力を示した。さらに、強化学習を通じた自己改善や転移学習によって、合成画像の多様性と精度がさらに向上したことが確認された。また、MINIMから生成された胸部X線や乳房MRIなどの合成画像を既存の診断モデルの学習データに用いることで、既存の診断モデルの精度が最大17%向上するなど、臨床的な有用性が実証された。その他にも、乳房MRIにおける乳がんのHER2陽性の有無や、肺CTにおける肺がんのEGFR変異型の鑑別タスクにおいても精度が向上することが示された。
著者らは「MINIMは、医療分野におけるAI活用の新しい基盤を提供し、個別化医療や診断精度の向上に貢献する可能性がある」と述べている。
参照論文:
Self-improving generative foundation model for synthetic medical image generation and clinical applications
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認知症の脳萎縮パターンを検出するAI研究
アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VD)、レビー小体型認知症(LBD)などの認知症は、しばしば複数の病理が共存し、診断が困難となるケースが多い。この課題に対し、テキサス大学サンアントニオ校の研究チームは、剖検前のT1強調MRI画像を活用した深層学習モデル「DeepSPARE」を開発した。このモデルは、AD、VD、LBDに関連する脳の萎縮パターンを個別に検出し、それを定量化する非侵襲的な指標を生成するものである。
9日、Brainから公表された研究論文によると、総計784名(認知症患者423名、対照者361名)のデータに基づき、DeepSPARE指数は高い予測精度(AD:0.844、VD:0.839、LBD:0.623)を示しており、各病理に特有の脳変化を明確に視覚化していた。ADでは海馬の萎縮、VDでは白質高信号の増加、LBDでは後頭部の異常が主に関連していた。
研究チームは「DeepSPARE指数は、認知症の異質性を解明し、診断精度を向上させるための重要なツールとなり得る」と指摘する。今後は、他の病理や新たなイメージングモダリティを統合することで、さらに汎用性の高い指標へと発展させることを計画する。これにより、認知症の早期診断や病態モニタリングが可能となり、個別化医療の発展に寄与することが期待されている。
参照論文:
Deep learning reveals pathology-confirmed neuroimaging signatures in Alzheimer’s, vascular and Lewy body dementias
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CT画像から消化管間質腫瘍の細胞増殖マーカー「Ki-67」の有無を予測
消化管間質腫瘍(GIST)の重要な免疫組織化学的指標として、Ki-67が知られている。これは腫瘍の増殖活性を示している可能性が高く、GISTの独立した予後指標として使用されている。中国の南京医科大学の研究チームはこのほど、 造影CT画像から術前にGIST患者のKi-67発現を正確に予測する機械学習モデルの研究についての成果を発表した。
Scientific Reportsから公開された本チームの研究論文によると、149人のGIST患者のデータを用い、腫瘍のサイズ、位置、マージンなどのCT画像特徴と1,316の放射線特徴量から、最終的に12の重要特徴量を選択・統合してラジオミクススコアを算出した。SVMモデルでKi-67発現を予測させた結果、AUCが0.832と高い精度で予測できることが分かった。特にSHAP分析により、腫瘍径が5.5cmを超えるとKi-67発現が高くなる傾向が明らかになった。
研究チームのメンバーは「このAIモデルにより、GIST患者の術前Ki-67発現をより正確に予測できるようになり、個別化医療の実現に向けた重要な一歩となる」とコメントしている。今後は複数の医療機関でのデータ検証や、多相CT画像特徴の活用、さらには遺伝子変異との関連性など、さらなる研究の展開が期待される。
参照論文:
Interpretable machine learning model based on CT semantic features and radiomics features to preoperatively predict Ki-67 expression in gastrointestinal stromal tumors
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歯科領域初のAIキャリブレーションツール「Calibrate」 – Pearl社
アメリカ・カリフォルニアに拠点を持つAIスタートアップ「Pearl」は、歯科領域で初のAI搭載臨床キャリブレーションツール「Calibrate」のリリースを発表した。Pearlは2019年の創業以来、歯科に特化したAI技術を開発しており、120か国でAIを利用した診断支援を実現している。
Calibrateの主な機能は、歯科医師の診断スキルを高め、診断と治療計画の一貫性を保つためのトレーニングにある。豊富な画像ライブラリが閲覧でき、独自の画像もアップロードできるため、歯科医師の解釈を標準化することができる。さらには保険請求の提出など、歯科診療において重要な手続きの補助も担うため、大規模なグループ病院間で診断プロセスの標準化が図られ、患者ケアの質と安全性が向上することが期待される。歯科診療以外でも、歯科教育や採用候補者のスキル評価などにも活用される予定だ。
PearlのCEOであるTanz氏は「これまで主観的であると見られてきた歯科診療において、Calibrateが新たなスタンダードを構築しつつある」と述べており、歯科診療、教育、保険査定業務における基準が確立されることで、患者からの信頼が増すことが期待される。
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AI対応ウェアラブルカメラで投薬ミスを検出 – 米ワシントン大学
過去に行われたメタ分析によると、臨床現場では約20人に1人の患者が「予防可能なインシデント」に遭遇している。薬剤関連のエラーはこれらのインシデントの主な原因であり、最大12%で重篤な状態もしくは死亡につながるとされる。これらを防ぐため、米ワシントン大学の研究チームは「AI対応ウェアラブルカメラで投薬ミスを検出するAI」の評価を行い、その成果をNatureの専門紙であるnpj Digital Medicineに発表した。
研究チームは、13名の麻酔科医に頭部装着型のカメラをつけながら薬剤準備をしてもらい、55日間にわたって4K映像を収集し、独自の大規模ビデオデータセットを作成した。そこから深層学習アルゴリズムを使用して、実際の手術室で記録された薬剤準備において、注射器とバイアルの薬剤ラベルを検出・分類した。その結果、高精度に薬剤ラベルを検出・分類できることが明らかとなり、特にバイアル交換エラーの検出において99.6%の感度と98.8%の特異度を達成している。
著者らは「このシステムは臨床現場で自動化された薬剤チェック手段を提供する可能性があり、手術室外でも有益なツールとなり得る」と語っている。カメラ搭載のウェアラブルデバイスが進化・普及し始めている昨今の背景も含め、本研究は今後の各種ウェアラブルデバイス研究に大きな示唆を与えている。
参照論文:
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identifeye HEALTH – 網膜撮像AIプラットフォーム「identifeye Camera」を発表
identifeye HEALTHは、AIを活用した網膜撮影プラットフォーム「identifeye Camera」の発売を発表した。このプラットフォームを搭載したデバイスは、ポータブルで簡単に操作できる網膜検査であるため、より多くの人々が医療機関で手軽に網膜検査を受けられることが期待される。
従来の眼科検診では専門の眼科医にかかる必要があり、それが障壁となり、特に多くの糖尿病患者が推奨される年次検診を受けていないという現状があった。identifeye Cameraは、誰でも使いやすいインターフェース、AIによる高度な自動化、そして携帯性に優れたデザインのため、特別な技術的知識がなくても使用できるよう設計されている。また、AIが自動で細かい設定を調整し、高品質な画像を一貫して取得するため、検査の精度向上も期待される。この小型で折りたたみ可能なデバイスはバッテリーで駆動するため、さまざまな医療現場へ簡単に持ち運ぶこともでき、眼科検診のアクセス向上に寄与する可能性がある。
identifeye HEALTHのCEO、Vicky Demas氏は「網膜スクリーニング検査を、毎年の健康診断で血圧を測ったりバイタルチェックをしたりするのと同じように、一般的で利用しやすいものにすることを目指している。網膜情報は糖尿病、高血圧、さらには神経疾患などの全身疾患を早期発見するための強力なツールであり、将来的には他の全身疾患や神経疾患の診断にも応用が広がると期待している」と語った。
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穿刺サポートのAIロボット「Mendaera」- 7300万ドルのシリーズB資金調達
手持ち型のロボット介入プラットフォームを開発する、シリコンバレーのヘルステック企業であるMendaera Inc.が、シリーズBで7300万ドルの資金調達を完了したと発表した。同社はこの資金を活用し、ロボット技術の完成、AIと接続機能の開発加速、そしてプラットフォームの臨床導入開始を目指す。
Mendaeraの技術は、ロボティクス、AI、リアルタイムの画像処理、そしてバーチャル接続技術を統合したプラットフォームで、生検、臓器・血管へのアクセス、疼痛管理介入など、多くの患者が経験する一般的な処置に適用される。従来の手術用ロボットが高度で特殊な手術に限定されていたのに対し、Mendaeraの技術は日常的な処置にも適用可能で、より広範な医療現場での利用が想定されている。この技術により、医療提供者のスキル不足や人手不足による処置のボトルネックを解消し、患者の待ち時間短縮やコスト削減につながることが期待されている。
Mendaeraの創業者兼CEOであるJosh DeFonzo氏は「従来の手術ロボットは手術室での使用が主流だったが、ロボット工学とAIは医療システムのあらゆる領域で広範な利益をもたらし、より多くの患者に高水準の医療を提供できる段階に進化した。我々の技術は患者体験を向上させ、医療アクセスを広げ、コスト削減と医療従事者の満足度向上に貢献するだろう」と語っている。
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頚椎骨折検出AI「CINA-CSpine」- FDA認証を取得
医用画像AI企業のAvicenna.AIは、頸椎骨折をCT画像から検出・トリアージするAIツール「CINA-CSpine」が米食品医薬品局(FDA)から510(k)認証を取得したと発表した。
頸椎は首の7つの椎骨を指し、頸椎骨折は脊髄損傷による神経障害や麻痺につながる可能性がある。治療のタイミングが予後に大きく影響するため、迅速な検出と適切な治療が重要とされる。CINA-CSpineはこの頸椎骨折を検出するために設計されたAIであり、急性の頸椎骨折が疑われる所見を自動的にフラグし、放射線科医に既存のシステムを通じて通知する。CINA-CSpineは、米国と欧州の複数の施設から提供された、36の異なるスキャナーモデル(5ベンダー)から取得される300以上の非造影CT画像で検証され、感度90.3%、特異度91.9%を達成している。
頸椎損傷の診断ミスは訴訟の対象となり、米国における平均的な法的費用は約300万ドル、和解金は900万ドルに達することがある。CINA-CSpineのようなAIツールは、見落としを防ぐための第二の目として役立つことが期待されている。Avicenna.AIの共同創業者兼CEOであるCyril Di Grandi氏は、「頸椎骨折は脊髄が関与している場合、迅速かつ適切な医療対応が必要であり、正確な診断が不可欠である。CINA-CSpineにより、CT画像の解釈にかかる時間を減らし、頚椎骨折の治療プロセスにおいて重要な役割を果たしたい」と述べている。
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スマートウォッチで女性向けウェルネスアプリ提供 – Zepp HealthとWild.AIが提携
スマートウェアラブル技術を持つZepp Health Corporationと女性向けウェルネスアプリのWild.AIは、Amazfitスマートウォッチに女性向けウェルネスアプリを直接統合するための提携を発表した。この統合により、ユーザーは手首に装着したスマートウォッチから、生理周期やホルモンの変化に基づいた「パーソナライズされた健康管理ソリューション」が利用できるようになる。
Amazfitスマートウォッチのアプリは、450以上の学術論文に基づいて開発されたWild.AIのアルゴリズムを活用し、ユーザーの生理周期やホルモン周期に応じたカスタマイズされた運動と食事に関する推奨事項を提供する。対象は生殖年齢から閉経後までと幅広く、このアルゴリズムには月経周期、149種類以上の避妊薬、閉経期に関する情報を含んでいる。さらに、Amazfitスマートウォッチから収集されたデータと自己申告データに基づいて、運動と体の回復に関するリアルタイムな洞察も提供される。
Zepp Healthによると、従来のスポーツ医療研究の80%が男性に焦点を当てていたため、女性は男性向けに設計されたテクノロジーに頼らざるを得ない状況があったが、この提携はその状況を変える可能性を秘めているという。Wild.AIのCEOであるHelene Guillaume氏は、「この統合が女性の生理学を考慮した革新的な健康技術の提供において重要な一歩である」と述べた。Guillaume氏自身、トレーニングパフォーマンスの変動がホルモン周期に関連していることを自身の体験から発見し、Wild.AIを開発している。
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Proprio社 – AI搭載手術プラットフォームを使用し50件の手術を成功
AI駆動型外科技術のグローバルリーダーであるProprio社は、手術用ガイダンスプラットフォーム「Paradigm」を用いた手術を50件成功させたことを発表した。また、これらの手術から得られた膨大なデータセットも公開している。この50件の手術は、米ワシントン大学医療センターの著名な脊椎外科医であるRichard Bransford医師らによって実施された。
Paradigmは、高度なコンピュータビジョンセンサーを活用して手術のリアルタイム3D解剖マッピングを提供し、外科医の意思決定をサポートする画期的なデジタルツイン機能を備えている。Paradigmを使用した50件の手術では、複雑な脊椎手術においてParadigmが数百ものインプラントの埋め込みをサポートし、良好な結果が報告されている。Proprio社は、このプラットフォームの使用により放射線画像の使用が平均して10分の1に削減されたと述べた。
Bransford医師は、「Paradigmが外科手術に前例のない可視化とデータ収集機能をもたらし、これまでの方法をはるかに超える精度を提供している」と評価している。また、Proprio社のCEOであるGabriel Jones氏は、「この50件の手術を大きなマイルストーンとしつつ、必要な医療を受けられていない世界人口の80%の人々に対して、この技術を拡大適用したい」と語った。
このプラットフォームは2024年から2025年にかけて、米国内外の主要病院に展開される予定となっている。
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手首装着型の加速度計で歩行障害を検出
加齢に伴い運動機能は低下するが、これらは多様な障害パターンを示し、歩行速度の低下、バランスの悪さ、歩行の変動性の増加、転倒に対する恐怖の増加、歩幅の短縮などの形として現れる。これらを正確に検出し診断するには、病院やクリニックで行われる短時間の歩行テストで得られるデータだけでは不十分なことが多い。
Scientific Reportsから公開された研究論文では、手首装着型の加速度計とディープラーニングの組み合わせにより、高齢者の日常生活における「歩行から歩行障害を検出できる可能性」を指摘している。研究者らは、自己教師あり学習を用いて、1,000人以上の参加者からなる大規模なラベルなしデータセットでモデルを訓練し、その後、パーキンソン病や慢性閉塞性肺疾患などの疾患を持つ83人の高齢者のラベル付きデータを用いて微調整を行った。このモデルは、従来の最先端アルゴリズムと比較して高い正答率(96.43%)、特異度(98.87%)、再現率(82.32%)、精度(86.69%)、F1スコア(82.92%)を示した。
著者は、このモデルは従来の手法では困難だった「歩行障害のある高齢者の歩行パターンを正確に検出できること」に加えて、神経変性疾患の早期診断や進行モニタリング、年齢関連の健康アウトカムのバイオマーカーとして機能する可能性があると述べている。
参照論文:
Self-supervised learning of wrist-worn daily living accelerometer data improves the automated detection of gait in older adults
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胆管癌、肝細胞癌を検出・鑑別する超音波AI
肝臓癌のスクリーニングにおける超音波検査(USG)の有効性は、検査施行者の専門知識や手技の熟達度によって制約が生じ得る。タイのChulalongkorn Universityの研究チームは、USG画像から肝臓の局所病変(FLLs)を検出し分類するAI支援システムの開発と評価を行った。
Natureの専門誌であるScientific Reportsに発表された同研究によると、YOLOv5モデルを用いて、7種類のFLLs(肝細胞癌、胆管癌、限局性脂肪浸潤、限局性脂肪非蓄積、嚢胞、血管腫、再生結節)を検出・鑑別するAIモデルが開発された。この後ろ向き研究では、5,444人の患者から得られた26,288枚の超音波検査画像を用いて訓練された。
このAIモデルは、全体的なFLLs検出率84.8%を達成し、1cm以下と1cm以上の病変に対しても一貫した性能を示した。悪性FLLsと良性FLLsの鑑別においては、感度と特異度がともに97.0%という高い精度を示した。具体的なFLLsタイプ別では、胆管癌の検出率が92.2%と最も高く、次いで限局性脂肪非蓄積が89.7%、肝細胞癌が82.3%だった。このAIモデルは、従来のCNNモデルと比較して性能が向上し、特に小さな病変の検出能力が改善された。
従来、USGスクリーニングでは胆管癌と肝細胞癌の誤分類が生じることがあり、特に胆管癌は化学療法に抵抗性がある悪性腫瘍として知られており、早期発見が非常に重要である。著者のRoongruedee Chaiteerakij医師は、「本研究結果の応用が、胆管癌の致命的な進行を防ぎ、リスクのある人の生存結果を改善するだろう」と語っている。
参照論文:
Artificial intelligence for ultrasonographic detection and diagnosis of hepatocellular carcinoma and cholangiocarcinoma
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日常会話から嚥下障害を評価するAI
従来の嚥下障害を診断する方法は侵襲的で、専門的な設備が必要といった課題がある。韓国のKonkuk University Medical Centerの研究チームは、AIを用いて日常会話の音声データを音節単位で分析し嚥下機能を評価することで、非侵襲的で簡便な方法を提案している。
Scientific Reportsに掲載された同研究では、16名の嚥下障害患者と24名の対照群から日常会話の音声データを収集し、音声認識モデルを用いて音節単位に分割した。その後畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いて嚥下障害患者と対照群の二項分類を行った。この深層学習モデルの評価として、音節単位と個人単位の2つの評価を行った。音節単位の分析では、嚥下障害の診断精度は0.794だった。次に、個人レベルでの評価では全体の精度は0.900、ROC曲線下面積(AUC)は0.953を達成した。これらの結果は、先行研究(Seoul St. Mary’s Hospital、Instituto Tecnológico Metropolitano、Pohang University of Science and Technology)と同等かそれ以上の性能を示している。
研究者らは、「この深層学習モデルが、嚥下障害の早期発見のための非侵襲的で簡便な方法として有望である」と述べている。特に、日常会話データを使用することで、より現実的な環境での診断が可能になることが期待される。しかし、サンプルサイズが比較的小さいこと、嚥下障害の重症度を考慮していないことなどの限界もあり、今後の研究での課題として挙げられている。
参照論文:
Deep learning approach for dysphagia detection by syllable-based speech analysis...
米アクセラレイタープログラム「Techstars AI Health Baltimore」が始動
米ジョンズ・ホプキンス大学と米医療保険会社のCareFirst BlueCross BlueShieldは、ベンチャーキャピタル企業のTechstarsと提携し、ヘルスケアAIツールを開発するスタートアップ向けのアクセラレータープログラム「Techstars AI Health Baltimore」の立ち上げを発表した。
ジョンズ・ホプキンス大学は、ヘルスケア領域において多くの革新性を生み出してきたことでよく知られており、2023年のデータサイエンス・AI研究所の立ち上げにより、この新興分野においても同様の革新性、卓越性が評価されている。
このプログラムは、アメリカ・メリーランド州のボルティモアで対面形式で実施され、13週間にわたって集中的に起業家を支援する。参加するスタートアップは資金提供、専門家のガイダンス、ヘルスケアエコシステムや規制環境のナビゲーションなどのサポートを受けられる予定だ。また、1クラスあたり最大12社、年間最大24社のスタートアップに投資するといい、Techstarsは初期投資として最大12万ドルを提供予定とのことだ。応募は2024年8月26日から11月20日まで受け付けている。
Techstarsのアンドリュー・クリーランド氏は、「AIのヘルスケアへの応用がイノベーションを加速し、より強力な患者へのソリューションを生み出すだろう」と述べている。ジョンズ・ホプキンス大学のマイラ・ノートン氏は、「このプログラムが起業家をエコシステムに呼び込み、インパクトのあるヘルスケアイノベーションを市場に持ち込みたい」と期待を寄せている。
参照記事:
Techstars, Johns Hopkins University, and CareFirst BlueCross BlueShield to Bring Healthcare A.I. Accelerator to Baltimore
関連記事:
2024年の米国における医療AI事情
ジョンズ・ホプキンス大学 – AIエイジング研究
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不妊治療中の卵巣刺激を最適化 – Alife Health
体外受精(IVF)治療において、卵胞刺激ホルモン(FSH)の開始用量と排卵誘発注射のタイミングを最適化する人工知能プラットフォームが有望な結果を示したことを、米国の2つの生殖補助医療センターの医師らが明らかにした。本成果はNatureの専門誌であるScientific Reportsで8月20日から公開されている。
IVF治療時には、FSHを用いてホルモン分泌を促進し、卵胞を育てる卵胞誘発注射を行うが、FSH開始容量や排卵誘発注射のタイミングはIVF治療の成功を左右する。本研究は、AIを使用してIVF治療を受けた291人の患者(治療群)と、AIを使用せずに同じ医師による治療を受けた患者(対照群)を比較した。治療群では、医師はAIを使用して卵胞刺激ホルモン (FSH) の開始用量とトリガー注入のタイミングを選択できる。主要評価項目は、使用されたFSHの総量と成熟卵子(MII卵子)の平均数の2つ。結果として、統計的に有意な差ではなかったものの、AIを使用した治療群では、対照群と比較して患者の治療成績が改善し、FSH使用量が減少する傾向が見られた。具体的には、MII卵子の平均数は治療群で12.20個、対照群で11.24個(改善=0.96個、p=0.16)、採取された卵子の平均数は治療群で16.01個、対照群で14.54個(改善=1.47個、p=0.08)とどちらも治療群で多い傾向にあった。また、FSHの平均総使用量は治療群で3,671.95IU、対照群で3,846.29IU(差=-174.35IU、p=0.13)と治療群でFSH使用総量が減少傾向であることを示した。
研究者らは、「この結果は、AIを用いた卵巣刺激の最適化が安全かつ効果的に行える可能性を示す最初の前向き研究の成果であり、AIツールがFSH開始用量と排卵誘発のタイミングに関する意思決定を標準化し、患者の治療プロセスを効率化し得る」と述べている。
参照論文:
Optimizing oocyte yield utilizing a machine learning model for dose and trigger decisions, a multi-center, prospective study
関連記事:
ARTへのAI利用 – 最適な胚数の予測モデル
受精胚評価AIが「妊娠までの期間」を短縮
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乳がん病理画像から「HER2発現の有無」を予測するAI
乳がん患者のH&E染色された組織病理画像から、HER2の発現(陰性、低発現、高発現)を予測する弱教師ありディープラーニングモデルが高い精度を示すことが明らかにされた。ブラジルの研究チームによる本成果は、8月19日からBreast Cancer Researchで公開されている。
HER2はがん細胞の増殖に関与するタンパク質だが、「HER2低発現」は最近注目されている乳がんのサブタイプであり、このタイプに対して新しい抗体薬物複合体による治療効果が示されている。従来のHER2評価には複数の免疫組織化学検査(IHC)と、場合によっては追加のin situ ハイブリダイゼーション検査(ISH)が必要だったが、本研究のAIはより迅速で費用対効果の高いHER2の評価方法となり得る。
本研究では、1,351人の乳がん患者から得られた1,437枚のH&E染色全スライド画像を使用し、6つの異なる深層学習モデルを構築して、HER2陰性、HER2低発現、HER2高発現の3クラスを区別する能力を検証した。モデルはアテンション機構ベースの弱教師あり学習法を用いてトレーニングされた。結果として、HER2陰性とHER2高発現を区別するモデルが最も高い性能を示した。一方で、HER2低発現の分類は比較的困難であることが明らかになっている。
研究者らは、この技術が臨床での意思決定を支援する可能性があると指摘する。例えば、IHC検査で2+と判定された「判定保留」の症例で、追加のISH検査が必要な場合、このディープラーニングモデルを用いてHER2低発現かHER2高発現かを判別することができる。また、IHC検査前のスクリーニングとしてHER2陰性とHER2高発現を区別するのにも有用となり得る。
著者らは、「将来的には、この技術が病理医のHER2評価を支援し、バイオマーカー評価の意思決定をサポートすることが期待される」と述べた。
参照論文:
Weakly-supervised deep learning models enable HER2-low prediction from H&E stained slides
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乳がん早期発見のための新しい血液検査
AI支援による乳がん検診の臨床的安全性評価
「AIアルゴリズムの組み合わせ」が乳がんリスクの長期予測に寄与
子どもの近視発症を予測するAI – DeepMyopia
子供の近視発症を高精度に予測し、適切な治療介入を促進する深層学習システム「DeepMyopia」が開発された。中国・上海の研究チームによる本成果は、Natureの専門誌であるNPJ digital medicineで8月7日から公開されている。
近視は世界的な公衆衛生上の課題となっており、早期発見と予防が重要とされている。DeepMyopiaは、網膜眼底画像と非散瞳下の眼科データ(年齢、性別、眼軸長など)を用いて、近視発症リスクを予測しハイリスク群を特定することで、効果的な介入を可能にする深層学習システムだ。上海の大規模コホート研究データ(n=1,638,315)を用いて訓練され、外部データセット(n=22,060)で検証された。その結果、1年、2年、3年後の近視発症予測のROC曲線下面積(AUC)がそれぞれ0.908、0.813、0.810となり、他の比較モデルに対して優れた予測性能を発揮した。
さらに、DeepMyopiaは子どもたちを近視発症の低リスク群、高リスク群へと効果的に分類し、介入のガイドとして機能する可能性がある。研究では、模擬ランダム化比較試験(eRCT)を実施し介入を行ったところ、DeepMyopiaを使用した介入群では、非散瞳下メタデータモデルと比較して、近視発症の相対的リスク減少が-17.8%と、近視発症の減少に寄与し得ることを示した。また、DeepMyopiaを用いた介入は100万人あたり13.54年の失明回避につながると推定された。
著者らは、「このシステムが公衆衛生の分野で大規模なスクリーニングや介入の指針として有用である」と述べている。また、今後の展望として、「さらに広範な地域や異なる人種での適用性を検証し、長期的な効果を評価するとともに、スマートフォンを用いた網膜画像技術を用いることで、より多くの子どもたちが恩恵を受けることが期待される」と述べた。
参照論文:
A deep learning system for myopia onset prediction and intervention effectiveness evaluation in children
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AIが腹腔洗浄細胞診から「膵臓がんの1年生存率」を予測
膵臓がん患者の腹腔洗浄細胞診(CY)標本から、1年生存率を予測するAIが高い精度を示すことを明らかにした。東北大学の研究チームによる本成果が、Scientific Reportsで8月2日から公開されている。従来、CYは主に膵臓がんの病期分類に使用されてきたが、患者の予後までを予測できるものではなかった。本研究ではCY陽性患者の予後予測にも活用できる可能性を示している。
本研究論文によると、チームは88人のCY陽性膵臓がん患者のデータを用いて、Vision Transformer(ViT)と畳み込みニューラルネットワーク(CNN)による深層学習モデルを構築した。ViTモデルは特に高い性能を示しており、ROC曲線下面積(AUC)として0.8056で1年生存率を予測していた。さらに、Kaplan-Meier生存分析を用い、ViTによる予測結果が患者の実際の生存期間と有意に相関することを確認した。
さらに興味深いことに、予後不良と予測された核画像は好中球由来である可能性が、予後良好と予測された核画像はマクロファージ由来である可能性が、それぞれ示唆された。この発見は、腹腔内の免疫環境が膵臓がんの進行や予後に重要な役割を果たし得ることを示唆する。特に腹腔内の好中球が腫瘍の進展を促進し、予後に悪影響を与える可能性から、これらの細胞が新たな治療標的となり得る、と研究者らは述べている。
著者は今後の展望について、「膵臓以外にも、腹水に影響を与え得る臓器の疾患に対しても研究を行い、悪性腫瘍の超早期の予測・予防への貢献を目指し、生存関連因子の機序の解明を進める予定」と述べた。
参照論文:
Deep learning predicts the 1-year prognosis of pancreatic cancer patients using positive peritoneal washing cytology
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転移細胞の画像から原発巣を特定するAIアルゴリズム
AIが「MRIにおける前立腺がん検出」を支援
米Mayo Clinicの研究チームはこのほど、MRIでの前立腺がん検出において、ディープラーニングモデルが放射線科医と同等の性能を示すことを明らかにした。研究成果は、北米放射線学会(RSNA)の専門誌であるRadiologyから公開された。
前立腺がんは男性において2番目に多くみられる悪性新生物で、その疾病負荷は世界的に巨大である。放射線科医は通常、臨床的に重要な前立腺がんを診断するため、異なるMRIシーケンスを組み合わせた技術(マルチパラメトリックMRIと呼ばれる)を使用する。診断結果は、標準化された解釈および報告手法であるProstate Imaging-Reporting and Data System version 2.1(PI-RADS)を用いて表現される。しかし、PI-RADSを用いたマニュアルでの病変分類には一定の限界が指摘される。AIを用いることで、がん検出の改善と観察者間のばらつき軽減が期待されてきた。
研究チームは、マルチパラメトリックMRIから臨床的に重要な前立腺がんを捉える畳み込みニューラルネットワーク(CNN)をトレーニングした。400の検査からなる内部テストセットと204の検査からなる外部テストセットの両方において、臨床的意義のある前立腺がんの検出における深層学習モデルの性能は、経験豊富な腹部専門放射線科医(abdominal radiologists)と変わらなかった。また、ディープラーニングモデルと放射線科医の所見の組み合わせは、内部テストセットと外部テストセットの両方において、放射線科医単独よりも優れた性能を示した。
著者らは「このモデルが読影医を補助し、偽陽性を低減したがん検出の向上を通じて、MRI診断能の改善につながる可能性」を指摘している。
参照論文:
Fully Automated Deep Learning Model to Detect Clinically Significant Prostate Cancer at MRI
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顕微鏡のぼやけや歪みを解消する新技術
2013年、米カリフォルニア工科大学の研究チームは「FPM(Fourier ptychographic microscopy)」と呼ばれる顕微鏡技術を発表した。この技術は、従来の顕微鏡センシングと、検出された情報を複数のアルゴリズムによって処理することで、より深く、より鮮明で、より広い領域をカバーする画像を作成することを可能とした。FPMはその後、比較的安価な装置で大視野を維持しながらサンプルの高解像度画像を取得できることから、広く採用されるに至った。同研究チームはこのほど、より少ない測定回数で、ぼやけや歪みのない画像を得る能力においてFPMを凌ぐ新手法を開発した。研究成果は、Nature Communicationsに掲載されている。
APIC(Angular Ptychographic Imaging with Closed-form method)と名付けられたこの新手法は、複数の推測に基づいて「最適」に到達する反復的な調整を行わず、シンプルな一次方程式を解き、顕微鏡の光学系がもたらす収差や歪みの詳細を得るというもの。ひとたび収差が明らかになれば、システムはこれを補正することができ、基本的に理想的な性能を発揮し、広い視野をカバーする鮮明な画像を得ることができる。FPMと同様、APICは顕微鏡を通して見える光の強度だけでなく、「位相」と呼ばれる光の重要な特性も測定する。この性質は人間の目には検出されないが、収差を補正する上で非常に有用な情報を含んでいる。FPMが試行錯誤的な手法に頼っていたのは、この位相情報を解くためだったが、新手法はこの位相情報に解析的な解を与えることを証明した。
位相差解消アルゴリズムの反復的な性質を排除するだけでなく、新しい技術によって、研究者らは顕微鏡の焦点を何度も合わせ直すことなく、広い視野に渡って鮮明な画像を集めることができるようにもした。FPMでは、サンプルの高さがあるセクションから別のセクションまで数十ミクロンでも変化すると、顕微鏡を使う人はアルゴリズムを機能させるために焦点を合わせ直さなければならなかった。このような計算顕微鏡技術では、100枚以上の低解像度画像をつなぎ合わせて大きな視野を構成することが頻繁にあるため、APICはプロセスを大幅に高速化し、多くのステップで人為的ミスが生じる可能性を防ぐことができるようになった。
著者らは「収差を補正し、解像度を向上させるフレームワークを開発した。この2つの能力は、より広範なイメージングシステムにとって実りあるものになる可能性がある」と述べている。新技術は、生物医学イメージング、デジタル病理学、薬剤スクリーニングなどの分野において、著明な進歩につながる可能性を秘めている。
参照論文:
High-resolution, large field-of-view label-free imaging via aberration-corrected, closed-form complex field reconstruction
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AIベースのリキッドバイオプシー技術が「がん再発」を予測
血液中を流れるがん由来のDNA(circulating tumor, ctDNA)を検出するAIモデルが、がん再発予測においてこれまでにない感度・精度を示すことを明らかにした。ニューヨークゲノムセンター(NYGC)やメモリアルスローンケタリングがんセンター(MSK)などの研究チームによる本成果は、Nature Medicineから14日公開されている。
チームの研究論文によると、ctDNAを検出するこの機械学習モデル(MDR-EDGE)は、肺がん・メラノーマ・乳がん・大腸がん・前がん性大腸ポリープの患者を対象とした実証にも成功している。リキッドバイオプシー技術はその大きな期待の一方で、有効な技術としての実現が遅れている。これまでのほとんどのアプローチは、比較的小さながん関連変異のセットを対象としており、それらはしばしば血液中にまばらに存在するため、確実に検出することができず、その結果、発見されないままがんが再発することが課題の1つだった。
今回の研究では、シーケンスデータの微細なパターンを検出し、特にがんを示唆するパターンとシーケンスエラー、またその他のノイズを示唆するパターンを識別することで、より高感度にctDNAを捉えることができる。実際、15人の大腸がん患者(外科的手術+化学療法後)において9人に「がんが残存していること」をMRD-EDGEは予測したが、このうち5人は数ヶ月後に再発が認められ、またMRD-EDGEでがんの残存を否定された症例は全て、調査期間中に再発しなかった。
本研究成果は、がん治療・モニタリング戦略に大きな影響を与え得るものであるとともに、大腸がんが発生する可能性のある大腸腺腫にも検出力を持つなど、スクリーニング戦略への影響も期待される。著者らは「全体として、MRD-EDGEは大きなニーズに応えるものであり、我々はその可能性に興奮している」と述べた。
参照論文:
Ultrasensitive plasma-based monitoring of tumor burden using machine-learning-guided signal enrichment
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AIツールによる病歴分析 – 最適な抗うつ薬選択を支援
米ジョージ・メイソン大学の研究者らは、AIモデルによる病歴分析で、患者ごとの最適な抗うつ薬を選択する新手法を提案した。研究成果はThe Journal of Mental Health Policy and Economicsから報告するとともに、MeAgainMeds.comというウェブサイトを通して知見の無償提供が行われている。
うつ病患者の多くは、症状を緩和する適切な抗うつ薬を見つけるまで、複数の抗うつ薬を試さなければならない現状がある。本モデルは「患者に試してもらう薬の数を減らすことができる点」を大きな強みとする。研究チームは、360万人を超えるうつ病患者について、以前の抗うつ薬に対する反応、現在の投薬、既往歴、その他の情報に基づき、各100例以上からなる1.6万を超えるサブグループを作成した。個人情報を含まない患者情報をウェブサイトに入力することで、どのサブグループに相当するかを知ることができ、推奨投薬が明らかとなる仕組み。
研究グループを率いるFarrokh Alemi教授は「患者をサブグループに適合させることで、臨床医は同じような病歴を持つ人々に最も効果的な薬を処方することができる」と述べる。研究者らと当該ウェブサイトは、このサイトを患者が利用した場合、その情報を臨床医に伝え、最終的には「臨床医が推奨された薬を処方するかどうかを決定すべき」という点を強調している。
参照論文:
Effectiveness of Antidepressants in Combination with Psychotherapy
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EUがAI規制法案を承認
欧州議会が本年3月に可決したAI規制法案について、欧州連合(EU)は21日、これを承認した。来月発効する。世界初の包括的なAI規制法となり、世界基準となることが見込まれる。
同法は、AIを活用したデジタルヘルスツールの開発者および導入者に対しても、高リスクAIシステムなどに新たな要件を適用することになる。法律の条文は入手可能であり、非常に読みやすい文体で書かれている一方、AI法がEU内外のデジタルヘルスの状況にどのような影響を与えるかについては、まだ多くのことが分かっていない。曖昧な文言が多く、多くの場合、高レベルの目標が記載され、詳細は関連するガイダンスや基準、加盟国の法律や政策に後ほど記載される。また、この法律が既存の医療AIの分野別法とどのように交差するのかも不明となっている。
AI法では高リスクAIシステムに厳格な透明性義務を課すが、汎用AIモデルについての透明性要件は比較的軽いことも特徴となる。AI法への違反は、最大で3500万ユーロ、または全世界売上高の7%のいずれか高い方という、高額の制裁金が科される。2年後の2026年に本格適用される見通しで、世界的な医療AI市場への影響にも関心が集まる。
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MRIによって「女性の心不全診断」を革新
英イーストアングリア大学(UEA)などの研究チームが、European Heart Journal Openにこのほど発表した新研究により、女性における非侵襲的心不全診断の精度を飛躍的に向上できる可能性を示した。磁気共鳴画像法(MRI)での心臓評価において、女性特有の生理特性に合わせた最適化モデルによって、より早期に、より正確に診断することが可能になるとする。
この研究は、UEA、シェフィールド大学、リーズ大学の研究者が共同で行ったもの。現在、最良の心不全診断法は、心臓内部の圧力を測定するためにカテーテルを使用することだが、侵襲性が高く一定のリスクが伴うことが課題となる。また、非侵襲的アプローチとして心エコーがあるが、検査に習熟が必要なことと、検査者間の誤差が大きく、最大で50%の症例で不正確な結果を与えているとの報告もある。研究チームは、MRIを用いて非侵襲的に心臓内部の圧力を測定する新しいモデルを導出し、特に女性の心不全初期段階での診断精度を16.5%向上させた。
心不全は心駆出率として知られる、1回の拍動で心臓の主要な部屋から絞り出される血液の量によって、異なるクラスに分類することができる。心臓のポンプ機能は保たれているが、心臓が弛緩して血液で満たされる能力が損なわれているタイプの心不全が、女性では多く見られることが知られている。一方、特に心エコー検査では、このタイプの心不全を診断することが容易ではなかった。
本研究成果は、将来的に多くの女性患者の早期診断につながる可能性があり、早期介入による予後改善が期待される。英国における女性の健康戦略も2年目となり、その一環としても本成果は高い評価を受けている。
参照論文:
32 Sex-specific cardiac magnetic resonance pulmonary capillary wedge pressure model predicts outcomes in heart failure: a multi-centre study
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「壁コンセントで利用可能」な低電力MRIをAIが実現
Science誌にこのほど掲載された研究論文によると、香港大学などの研究チームは、深層学習を利用して「低電力で安全、かつ低コストな磁気共鳴画像法(MRI)を実現する新しい手法」を開発した。この技術は、超低磁場(ULF)MRIスキャナーを使用し、従来の高磁場MRIと同等の精度を保ちながら、費用とエネルギー消費を大幅に削減することができる。
MRIは、放射線を使用せずに詳細な体内画像を提供するため、医療診断において非常に価値のある技術である。しかし、従来のMRIスキャナーは高価であり、特に低・中所得国ではアクセスが限られていることが課題でもあった。標準的な超伝導MRIスキャナーは、1台あたり数百万ドルの費用がかかり、設置や維持にも専門的なインフラが必要となり、検査普及の明確な阻害因子となってきた。
研究チームは、標準的な家庭用電源で動作し、RF(無線周波数)シールドや磁気シールドが不要なULF MRIスキャナーを開発した。このスキャナーは、0.05テスラのコンパクトな磁石を使用し、深層学習を用いて電磁干渉信号を除去することで、従来の高磁場MRIと同等の画像品質を実現している。研究では、健常なボランティアを対象にこのデバイスを使用したテストが行われ、高磁場MRIと同等の詳細な画像が得られたとしている。
新技術に基づく低磁場MRIは、MRIのコストと複雑さを大幅に削減し、低・中所得国や小規模な医療施設でも日常的な専門検査を実現する可能性があり、大きな注目を集めている。
参照論文:
Whole-body magnetic resonance imaging at 0.05 Tesla
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大規模言語モデルによるトリアージプロセスの支援
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、25.1万人の匿名化済みデータセットを用いた研究により、大規模言語モデル(LLM)が患者の臨床記録から症状を抽出し、治療の緊急性を効果的に判定できることを明らかにした。研究成果は7日、JAMA Network Openに掲載された。
患者の治療緊急性を判断するトリアージプロセスは、ケアとリソースの最適割り当てに欠かせないものであるが、多くの患者を時間の猶予なく対応することは、救急部門にとって大きな負担となっている。研究チームは、GPT-4をベースとし、広範なプライバシー保護を備えるUCSFの生成AIプラットフォームを介して研究を実施した。脳卒中などの重篤な患者と、手首骨折などの比較的緊急性の低い患者を含む、マッチングされた1万組のサンプル(計2万人の患者)を用い、構成したモデルの性能をテストした。患者の症状だけを用いた際も、AIは89%の高確率でどちらの救急患者がより深刻な状態にあるかを特定できており、500組のサブサンプルにおける医師評価が86%であったのに対し、AIは88%と有意にその性能が上回っていた。
AIがトリアージプロセスを支援することで、深刻な状態にある患者を治療するための「医師の時間」を解放することができ、同時に複数の緊急要請をこなす臨床医にとってバックアップとなる強力な意思決定ツールを提供できる可能性がある。
参照論文:
Use of a Large Language Model to Assess Clinical Acuity of Adults in the Emergency Department
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Boston Medical Sciences – 厚労省「優先SaMD」への指定
Boston Medical Sciences株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:岡本将輝)は7日、開発中の無下剤バーチャル内視鏡検査システム「AIM4CRC」について、厚生労働省より「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目」に指定されたことを明らかにした。
プログラム医療機器に係る優先的な審査は、令和4年度「プログラム医療機器に係る優先的な審査等の試行的実施について」(薬生機審発0902第2号)において通知された取り組みであり、令和5年度(第二回)についても、プログラム医療機器の特性を踏まえた要件設定の下、ごく少数が対象品目として指定されている。対象品目は優先的な相談・審査が受けられるほか、専属のコンシェルジュによる対応等が試行的に実施される。同社は今回の指定を受け、「さらなる研究開発と薬事・治験戦略の加速に努める」としている。
Boston Medical Sciencesは2023年4月に、ハーバード大学医学部およびマサチューセッツ総合病院で教員・研究者を務める医師が設立した医療AIスタートアップ。大腸CT検査をベースとした、下剤不要のバーチャル内視鏡検査システムである「AIM4CRC」を世界で初めて、日本から臨床実装することを目指している。
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AI心電図 – リスク患者の特定により院内死亡を大幅に低減
Nature Medicineに掲載された最近の研究により、AIを活用した心電図が、死亡リスクのある入院患者を特定できる可能性が明らかにされた。研究成果は、台湾のチームが実施したランダム化比較試験に基づくもの。
重症患者に対する集中治療は死亡率を低下させるが、この遅れは有害な転帰につながる。医療機関では、臨床的な増悪を管理するため、迅速対応システム(RRS)を導入している。RRSの作動には、トラック・アンド・トリガー・システム(TTS)が不可欠となる。
TTSを病院内に統合することで、リアルタイムの警告が可能となり、クリティカルケアの質が向上する可能性がある。研究者らは以前、死亡リスクを層別化し、全死因死亡率を予測するためのAI対応心電図(AI-ECG)を開発した。AI-ECGは有効なTTSとなりうるが、現在までに関連するランダム化比較試験は実施されてこなかった。
本研究では、AI-ECGをTTSに適用し、状態が可逆的である増悪患者を特定した。AI-ECGは死亡リスクの予測において、患者のベースライン特性よりも有意に優れており、高リスク群では、年齢と性別で調整した全死亡のハザード比は7.53であった。特に、不整脈による死亡の予測能が最も高かった。AI-ECGによる積極的な警告は介入群の死亡リスクを23%から16%に減少させたとしている。
以上の結果から、AI-ECGの使用は死亡率を有意に減少させることが示された。AI-ECGを用いたこのRRSの成功は、医師の注意力の高さに起因していると考えられる。また、研究チームは、将来的に全ての患者にリアルタイムで導入された場合、各患者のアラート件数は月平均10件以下になるとしている。
参照論文:
AI-enabled electrocardiography alert intervention and all-cause mortality: a pragmatic randomized clinical trial
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Smart Reporting – AIによる報告書作成支援
ドイツ・ミュンヘンを拠点とするSmart Reporting社は、米ハーバード大学放射線学のWieland Sommer教授によって2014年に設立された。医療分野におけるドキュメンテーションソフトウェアで、リーディングカンパニーとしての地位獲得を目指している。
Smart Reportingは、医療報告、特に放射線学と病理学におけるパイオニアとして知られ、マーケットリーダーになりつつある。メーカーに依存しない「SmartReportsソフトウェア」は、ワークフローの自動化と機械可読データの基礎を形成する、完全に音声制御されたデータ駆動型ドキュメントソリューションを提供する。同社のソフトウェアは、主要なヘルスケアITパートナーシップ(シーメンス・ヘルシニアーズ、GEヘルスケア、キヤノンを含む)を通じて国際的に販売されている。
生成AIの活用による機能拡張を見据えて22日、同社はシリーズCラウンドとして2300万ユーロ(約38億円)の資金調達を明らかにした。品質とデータの標準化を向上させながら、医療文書作成における手作業と繰り返しプロセスの簡略化をもたらし続ける。
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皮膚画像の自動アノテーションモデル「MONET」
米ワシントン大学などの研究チームは、皮膚科系の医療画像に対して「医学的に関連するアイデアを注釈」することができるAIモデル「MONET(medical concept retriever)」を開発した。研究成果は16日、Nature Medicineから公開されている。
研究チームは、PubMed論文や医学教科書群から105,550件の皮膚科画像とテキストのペアを収集し、MONETをトレーニングした。MONETは各アイデアに対し、医療画像にレーティングを付与し、画像がどの程度その概念を描写しているかを示すことができる。対照学習に基づくMONETは、画像に直接平易な言語記述を適用できるAIアプローチとなる。この手法では、手作業によるラベリングが不要であるため、教師あり学習では現実的に不可能な、大規模画像とテキストのペア情報を得ることができる。MONETのトレーニング後、研究者らはアノテーションやその他のAI透明性関連のユースケースにおける有効性も評価している。
コンセプトアノテーションのためのプラットフォームであるMONETは、アイデアの大規模なアノテーションを可能にすることで、皮膚科AIの透明性と信頼性を向上させることができるとして、研究者らは成果の重要性を強調している。
参照論文:
Transparent medical image AI via an image–text foundation model grounded in medical literature
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DermSmart AI – カナダ発「会話型皮膚科診断AIツール」




















































