肝臓癌のスクリーニングにおける超音波検査(USG)の有効性は、検査施行者の専門知識や手技の熟達度によって制約が生じ得る。タイのChulalongkorn Universityの研究チームは、USG画像から肝臓の局所病変(FLLs)を検出し分類するAI支援システムの開発と評価を行った。
Natureの専門誌であるScientific Reportsに発表された同研究によると、YOLOv5モデルを用いて、7種類のFLLs(肝細胞癌、胆管癌、限局性脂肪浸潤、限局性脂肪非蓄積、嚢胞、血管腫、再生結節)を検出・鑑別するAIモデルが開発された。この後ろ向き研究では、5,444人の患者から得られた26,288枚の超音波検査画像を用いて訓練された。
このAIモデルは、全体的なFLLs検出率84.8%を達成し、1cm以下と1cm以上の病変に対しても一貫した性能を示した。悪性FLLsと良性FLLsの鑑別においては、感度と特異度がともに97.0%という高い精度を示した。具体的なFLLsタイプ別では、胆管癌の検出率が92.2%と最も高く、次いで限局性脂肪非蓄積が89.7%、肝細胞癌が82.3%だった。このAIモデルは、従来のCNNモデルと比較して性能が向上し、特に小さな病変の検出能力が改善された。
従来、USGスクリーニングでは胆管癌と肝細胞癌の誤分類が生じることがあり、特に胆管癌は化学療法に抵抗性がある悪性腫瘍として知られており、早期発見が非常に重要である。著者のRoongruedee Chaiteerakij医師は、「本研究結果の応用が、胆管癌の致命的な進行を防ぎ、リスクのある人の生存結果を改善するだろう」と語っている。
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