医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例疾患診断へのAI活用事例GestaltMatcher - 顔分析で希少遺伝子疾患を判別するAIシステム

GestaltMatcher – 顔分析で希少遺伝子疾患を判別するAIシステム

これまでの研究により、多くの「希少疾患」に遺伝性が指摘されてきた。遺伝子の突然変異は身体の様々な部位に系統的な変化をきたすが、顔貌(眉毛や鼻の付け根、頬など)もこれに含まれる。AIによって顔の特徴を捉え、疾患の臨床症状や遺伝子データと自動的に結びつける診断システムの開発が、独・ボン大学で進んでいる。

ボン大学の10日付リリースでは、同AI診断システム「GestaltMatcher」を紹介している。GestaltMatcherは、同大学病院のゲノム統計・バイオインフォマティクス研究所(IGSB)で数年前から開発されていた「DeepGestalt」というAIシステムを発展させたものとなる。DeepGestaltでは、AIシステムの訓練の際に10人程度の非血縁患者の顔の特徴を参考にする必要があった。しかし、後継システムであるGestaltMatcherでは、特徴量の照合に必要な患者数を大幅に減少させており、世界でも数名の患者しか報告されていない希少な遺伝子疾患群などで大きなアドバンテージとなる。IGSBのPeter Krawitz教授によると「AIの学習効果を高めた結果、2名ほどの患者を基準にしても比較的自信をもった診断ができるようになった」という。

GestaltMatcherのさらなる利点として、診断されていない未知の疾患での類似性も考慮することで、トレーニングセットに含まれていない疾患も認識できるようになっている。このことは「まだ知られていない遺伝性疾患を分類し、その遺伝子情報の手がかりを新たに提供できるようになった」ことを意味する。本研究の最新の成果はNature Genetics誌に発表されており、研究チームは収集したデータを非営利団体「Association for Genome Diagnostics(AGD)」に提供し、他の研究者がアクセスできるようにすることで、希少疾患向けAI技術のさらなる発展の基盤となることを期待している。

関連記事:

  1. 子どもの顔写真から遺伝性疾患をスクリーニングするAI研究
  2. 小児遺伝性疾患の診断に貢献するAI
  3. クリニカルゲシュタルト – 見た目で疾病罹患を識別するAI
  4. 遺伝子情報から胸部大動脈瘤リスクを評価
  5. AIにより「遺伝子変異の病原性」を定量
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事