Microsoftの研究チームは強化学習フレームワークを活用し、「統計的にどの治療を選択することがさらなる健康悪化を引き起こす可能性があるか」を特定することで、引き返すことのできない「デッドエンド」を予測し、これを回避するためのAIモデルを開発した。
医療は逐次的な意思決定が特徴となる。医療者は患者の状態を観察し、治療を選択・実施した上で、その結果を評価する。これを繰り返すことで治癒を目指すが、一方で潜在的に望ましくないルートを選択し続けた場合、ある一点でどのような現行治療を選択しても状態の改善が起こらない、いわゆる「デッドエンド」に到達する。研究チームが明らかにしたところによると、医療リアルワールドデータを用い、集中治療室で敗血症に罹患する重篤な患者に焦点を当て、このAIモデルを開発した。
2001~2012年までの入院患者データセットから、敗血症に罹患した約2万人のICU患者を抽出し、44の変数と25の治療法に強化学習を利用することでこのAIモデルを導いた。結果、亡くなる48時間前までに10%もの患者が「デッドエンド」に陥っていることも、併せて確認されている。研究チームは「これらの割合は小さく見えるかもしれないが、米国の病院だけで毎年20万人以上の患者が敗血症で亡くなっており、この割合が少しでも改善すれば何万人もの救命につながる可能性がある」と述べ、成果の重要性を強調している。
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