「網膜の血管構造から全身の健康状態を反映した特徴が見出せる」という考えが、AI研究の進展とともに広まってきた。英エディンバラ大学ロスリン研究所のチームは、網膜血管画像と遺伝情報を組み合わせることで心筋梗塞の早期バイオマーカーとする研究を行っている。
チームの最新の研究成果は、欧州人類遺伝学会(ESHG)の年次総会で発表された(プレプリント版はmedRxiv参照)。同研究では、網膜血管の分岐パターンの複雑さからフラクタル次元(生体構造の表面積比率などを反映する幾何学的な統計量)を計算し、心疾患に関与する9つの遺伝学的特徴と合わせることで、心筋梗塞リスクを推定する機械学習モデルを開発した。その結果、モデルの性能はAUC 0.770を達成し、既存のリスク予測モデルのAUC 0.719を上回るとしている。
筆頭著者でロスリン研究所の博士課程学生であるAna Villaplana-Velasco氏は「本研究では、単純化した網膜血管の分岐パターンが、心筋梗塞リスクと関連していることを示した。日常的に収集される網膜画像のようなデータを包括的に解析することの重要性と、個別化医療の発展における価値を示している」と語った。
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