乳幼児を対象とした検診において、発達に深刻な障害をきたす疾患群の早期発見は重要となる。我が国においても、母子保健政策の拡充に伴う乳児検診充実の一方、短時間の診察で脳性麻痺を適切にスクリーニングすることは容易ではなく、特に症状発現が軽微である場合の取りこぼしが課題となってきた。
ノルウェー科学技術大学を中心とする研究チームは、9~18週齢の乳児において「自発運動の動画」から脳性麻痺を識別する深層学習モデルを構築し,その妥当性を評価した研究論文を公表した。JAMA Netowrk Openからこのほど公開された研究論文では、ベルギー・インド・ノルウェー・米国の13病院で行われた先行研究に登録された「周産期脳損傷リスクの高い557人の乳児」を対象としている。9週齢から18週齢までの期間に記録されたビデオ、および12カ月齢以上での脳性麻痺関連の検査を含む臨床データを利用してモデルトレーニングを行い、既存の運動評価ツールであるGMAによる識別とその性能と比較した。結果、新しい深層学習ツールによる識別は有意に高い精度を示しており、特に一部のサブタイプにおいては著明な感度の改善を認めた。
検証結果を受け、著者らは「深層学習アプローチにより、乳児の自発運動動画から脳性麻痺の存在を早期に検出できる可能性」を指摘し、臨床実装を見据えたツールの改善と、さらなる検証の必要性を強調している。
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