医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究センチネルリンパ節生検の有用性をAIで評価

センチネルリンパ節生検の有用性をAIで評価

UPMC Hillman Cancer Centerの研究者らは、Realyze Intelligenceの技術を使用し、70歳未満の早期乳がん患者に対するセンチネルリンパ節生検(SLNB)の有用性を検証した。

乳腺外科医は核染料を使い、腫瘍に隣接する最初のリンパ節である「センチネルリンパ節」を探し出して切除し、がん細胞がリンパ系に広がっていないかどうかを確認する。同グループの過去の研究成果では、外科腫瘍学会の勧告に従い、70歳以上女性のほとんどでSLNBを避けることができること、また、これらの女性に対するSLNBの実施は価値の低い手術となる可能性があること、を示している。SLNBは一部の人々に多大な恩恵を与える一方、合併症や他疾患リスクも大きいことが指摘される。Realyzeの臨床情報プラットフォームは、従来の手作業を置換し、患者電子カルテからあらゆる非構造的臨床記録と構造化データ群の両者を迅速に読み取ることができる。これを利用して研究者らは、「SLNBが有効でない可能性のある患者コホートを正確に特定できること」を明らかにした 

本研究プロジェクトを率いるAdrian Lee氏は「我々は、適切な患者を対象に『可能な限り最高の治療』を提供したい」とした上で、「最も興味深く、関連性の高いデータポイントは、患者記録の非構造化領域にあることが多い。これらのフィールドからデータを記録し、分析する能力を持つことは、特定の患者集団にSLNBが必要であるかどうかを理解するために不可欠だ。がん登録ではなくRealyzeのプラットフォームを用いることで、リアルタイムに大量のデータを迅速かつ効率的に抽出することができる」と述べた。本研究は初期段階にあり、詳細を記した論文は公表されていないが、SLNBはメラノーマや頭頸部がんの評価にも使用されており、将来的に他のがん診断にも同技術が適用・検証される可能性が高い。

関連記事:

  1. Realyze Intelligence – 電子カルテからハイリスク群を抽出するAIプラットフォーム
  2. UCI – 自然言語処理によるEHR分析環境を構築
  3. Savana EHRead – 深層学習と自然言語処理による精密医療の加速
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事